杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

2022-05-01から1ヶ月間の記事一覧

「もう、あとはいつ死んでもいい」

凝りに凝った藤澤全集 「本の雑誌」2022年6月号の特集は、西村賢太の追悼企画「結句、西村賢太」です。これは図書館で借りて済ませてはいけないと思い、ちょっと遅くなりましたが先日本屋で買いました。 まだじっくり全て読んだわけではありませんが、個人的…

「人間の日」と「主の日」

人間の悩みは変わらない 毎日、少しずつ読み進めている曽野綾子『心に迫るパウロの言葉』(新潮文庫、1989年)。ユダヤ教から回心してキリスト教の伝道に生きたパウロが残した言葉をめぐるエッセイですが、曽野の筆致は、あくまで冷静な作家のそれであり、だ…

板橋区立熱帯環境植物館「お魚幼稚園~大人と子供で模様が変わる不思議な世界~」

「グリーンドームねったいかん」こと板橋区立熱帯環境植物館で、企画展「お魚幼稚園~大人と子供で模様が変わる不思議な世界~」が開催されていたので、見てきました。 幼魚から成魚になると大きく見た目が変わる魚を選び、その幼魚の方を紹介するものです。…

多摩ニュータウン開発の目的

乱開発の防止だったらしい 『地図で読み解く東京』(三才ブックス、2021年)は、東京という世界有数の都市について、地形と自然、交通と運輸、経済と文化などの面から、地図を主体としたビジュアルで解説する本です。歴史と地理に興味を持つ人であれば、まず…

「介護はクリエイティブ」

カッコいいとか、イケてるとかじゃない 先日、福祉業界の方と話をする機会があり、その方が会話の中で「介護はクリエイティブだと思う」と言っていました。我が意を得たり、でしたね。 介護=クリエイティブについては、このブログで過去に書いたことがあり…

また書きます。

ある小説新人賞に応募していましたが、先日、賞のホームページを見て、一次選考を通らなかったことがわかりました。 その新人賞にはwebサイトを通して応募したのですが、その時は応募を受け付けた旨、自動返信で連絡がきました。しかし一次選考結果の発表に…

佐伯一麦の「文学的自叙伝」

重要な本 佐伯一麦『Nさんの机で』(田畑書店、2022年)を購入。たまたま入った神保町の本屋で見つけ、迷わず買いました。 本書は佐伯が山形新聞に2013年10月9日から2017年12月27日まで、毎月第二、第四水曜日に連載したエッセイをまとめたものです。私は本…

松本清張 昭和の旅

風土記への憧れ NHKのBSの番組「新日本風土記」をたまに見ています。 そもそも私は「風土記」という、今でいう地誌が好きで、岩波写真文庫の「新風土記」も全巻持っているほどです。風土記編纂には憧れさえも抱いていて、このブログには「新河岸川風土記」と…

思い出の品々

私の「銀の匙」 先日、実家から送られてきて以来ずっと開封せずにいた段ボール三箱をついに開封しました。幼少期の思い出の品々を、親がまとめて放り込んで保管していたもので、このたび身の回りの品々を断捨離する過程で、本来の持ち主である私にあとは任せ…

北村薫と宮川一夫

不可能な撮影 北村薫『謎物語』(創元推理文庫、2019年)を拾い読みしています。内容はミステリに関するエッセイで、北村先生らしい、柔らかいが鋭い語り口を通してミステリと謎の美味しさを味わうことのできる本です。 その「第五回 謎解きと物語」は、ステ…

写真家ワナビ小自伝

写真家志望者がボロボロになるまで 私はフクロウが好きで、今回ある偶然から滝沢信和『フクロウを撮る――農業青年の観察苦闘記』(岩波フォト絵本、2002年)を手に取り、読みました。 本書はタイトルの通り、「農業青年」である著者の滝沢が長野の自宅近くの…

師匠と弟子

いわば恋愛関係 2年以上前、このブログで師弟関係について書きましたが、最近、身近なところで「弟子」という語を聞き、考えさせられる機会があったので、また書くことにしました。 落語家とか相撲部屋とか、あるいはライターやデザイナーといったクリエイタ…

フリーという生き方

昨日のNHK「クローズアップ現代」は「フリーランス どんな働き方?実態は?」でした。コロナ禍を機に増加したフリーランスは名目上は「自由な働き方」とされ、政府により成長戦略の一つとして推進されているけれども、実態はそんなに華やかなものではなく、…

筋トレと人生の問題

今風の考え方かも Teststerone『筋トレが最強のソリューションである』(U-CAN、2016年)を読んでいます。日常生活や仕事の調子にテストステロンなどのホルモンが深く関わると知って、手に取った本です。 内容はほぼタイトルの通りで、筋トレが人生のあらゆ…

生きながらの埋葬

とつぜん盲目になったパウロ 曽野綾子『心に迫るパウロの言葉』(新潮文庫、1989年)を、少しずつ読んでいます。パウロの言葉と逸話を元に曽野が自身の考えを述べる随筆で、読み応えがあります。 パウロは元々ユダヤ教徒で、キリスト教弾圧のために赴いたダ…

読ませる漫画

最後は仲直り 野原広子の漫画『妻が口をきいてくれません』(集英社、2020年)を読みました。 私はこれまで、作者が描く漫画のテーマに興味があって作品をいくつか手に取ったのですが、過去に読んだ『消えたママ友』(KADOKAWA、2020年)と『ママ友がこわい…

優秀なデザイナー

まず解決不可能な重力問題 ビル・バーネット&デイヴ・エヴァンス『スタンフォード式 人生デザイン講座』(千葉敏生訳、早川文庫、2019年)を読んでいます。これは2017年に早川書房から出た同じ著者・訳者の『LIFE DESIGN スタンフォード式 最高の人生設計』…

困った客

難しい注文 先日もこのブログに書いた渡瀬謙『負けない雑談力』(廣済堂新書、2016年)ですが、読んでいて面白かった箇所がありました。 第1章「雑談ってコツさえわかれば簡単なんです」の、雑談の目的がわかれば話しやすくなる、と書かれているくだり。 何…

ポオ「メエルシュトレエムに吞まれて」

大渦潮からの逃亡譚 エドガー・アラン・ポオ「メエルシュトレエムに吞まれて」(『ポオ小説全集3』(創元推理文庫、1974年)所収、小川和夫訳)を読みました。 ノルウェーのロフォーデン地方にあるヘルゼッゲンという山の頂上で地元の老漁師が語り手に語る…

雑談雑感

雑談指南書 渡瀬謙『負けない雑談力』(廣済堂新書、2016年)を読みました。 雑談が苦手な人に向けた「雑談力」向上を指南する本です。「人見知り・口下手も関係ない」というサブタイトルがついていますが、著者の渡瀬自身がそういう人だというのは、「はじ…

金芝河

『人生の親戚』を読んで 5月8日、韓国の詩人・金芝河(キム・ジハ)が死にました。81歳。 報道では金は韓国民主化の象徴だとありましたが、私は詳しいことは知らず、恥ずかしい限りです。ただ、大江健三郎が1975年に他の文化人などと共に数寄屋橋公園でハン…

「いったん、しおりを挟みます。」

檀一雄の本を買った店 5月8日、三省堂書店神保町本店が一時閉店になりました。141年にわたって営業を続けてきたものの、ビルが老朽化したため建て替えることとなりました。2025年の新店舗オープンを目指し、しばらくは仮店舗で営業するとのことです。 当日、…

ポオ「モルグ街の殺人」

世界初の推理小説 エドガー・アラン・ポオの「モルグ街の殺人」(『ポオ小説全集3』(創元推理文庫、1974年)所収、丸谷才一訳)を読みました。ちなみに私が持っている文庫は2001年の第38版です。重版の多い本は他にもたくさんあるでしょうけれど、27年で38…

人生の目的

HSPに効く本 本多信一『人生が変わる お金と会社にしばられない生き方』(PHP、2013年)は、職業相談をライフワークとする現代職業研究所の著者が「お金にこだわらず、自由に生きる」ヒントを教えてくれる本です。 読者対象は特に限定していないようですが、…

毎日書くこと11

サラリーマン的発想からの脱却 今年のGWは東京を離れ、里山の風景が広がる場所でのんびりしました。スマホは1日に数回見た程度で、テレビも少々見ましたが、ほぼデジタル抜きで過ごした数日間でした。 お陰で両眼の疲労が取れ、頭の冴えもいくらか取り戻した…

歴史を歩く

街歩きが楽しくなる 吉川弘文館の『みる・よむ・あるく 東京の歴史』シリーズをよく読んでいます。 吉川弘文館というと日本史や世界史の「年表」が有名で、他にも私は「歴史手帳」を持っていたこともあり、歴史専門の堅い会社というイメージを持っていました…

良寛詩碑

日中友好の懸け橋 題蛾眉山下橋杭不知落成何年代 書法遒美且清新分明我眉山下橋 流寄日本宮川濱 沙門良寛 越後出雲崎に生まれた良寛が、中国から長江を下って日本海を渡り、柏崎市の宮川浜に漂着した木柱を見て詠んだ詩です。木柱には「娥眉山下喬」という五…

正直こそ美徳

口八丁が嫌 本多信一『人生が変わる お金と会社にしばられない生き方』(PHP、2013年)に、こんな箇所があります。 いろいろな会社に赴いてさまざまな人たちを観察すると、やはり、「ウソのつけない正直な人」が伸びているといえます。もちろん二十代、三十…

頭は老人、心は子供

老成し、なおかつ幼稚 本多信一『人生が変わる お金と会社にしばられない生き方』(PHP、2013年)を読んでいます。タイトルそのまま、お金や会社に縛られずに生きる考え方や行動の仕方について、本多さんが実体験を元に紹介している本です。 目次を見ながら…

「複式履歴書法」

二つの履歴書を作る 鈴木輝一郎先生の『何がなんでも新人賞獲らせます!』(河出書房新社、2014年)に、「複式履歴書法」という小説技法が紹介されています。鈴木先生曰く、「この小説技法がいちばん新人賞の予選を確実に通る模様」とのことです。 この技法…