杉本純のブログ

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人生の目的

HSPに効く本

本多信一『人生が変わる お金と会社にしばられない生き方』(PHP、2013年)は、職業相談をライフワークとする現代職業研究所の著者が「お金にこだわらず、自由に生きる」ヒントを教えてくれる本です。

読者対象は特に限定していないようですが、私が思うに、本多さんの言葉に反応するのは主に内向型人間ではないかと思います。奥付の著者プロフィールを見ると、現代職業研究所は内気で悩む人のために作られたものなので、本書の中心的読者もたぶんそうでしょう。ちなみに内向型人間は、今でいう繊細さん=HSPだと私は思っています。

私が最初に読んだ本多さんの本はたしか『内向型人間の仕事にはコツがある』(大和出版、1997年)で、どういう経緯で手に取ったかは忘れてしまいましたが、それ以来、本多さんの本はよく読んでいます。

内向型は“目的必要派”

さて、その第一章「自分らしく生きよう!」には、「内向型の人にはそれぞれの『人生目的』が必要だ」という節があります。その中に、こんなくだりがあります。

「人生目的は必要か?」については、人によってさまざまな見方があります。概して外向型の人々の中には「時流に乗って生きたらそれでいいんだ」と考えていて、“目的否定派”の人たちが少なくないものです。一方、内向型は“目的必要派”が多いように見えます。
 そう、私をはじめとする内向型気質の人たちは、「目的をもつことで生に対する意欲が高まる」わけですね。

そうは言うものの、本多さんはその前段の方で、「万人に人生目的は存在する」と考えていると書いています。

目的などないからこそ

まず前提として、その人の人生に決まった目的がないことは、事実として動かしがたいことだと思います。しかし、人間は動物の一種で、本能を持っていますので、その本能の命ずるところが、短期的にしろ長期的にしろ、目的になると言えるかもしれない。食欲、性欲、睡眠欲など…。

私が人生に目的がないのは事実だというのは、宗教的な務めとか戒めのような、自分以外の者から与えられた、苦痛を伴ってでもやり遂げなくてはならない仕事やルールなどあると思わなくていい、といった意味です。

だから逆に、人生を充実させるために自分で作った目的なら、大いにありじゃないか、と思います。

また、本書で本多さんが内向型の人こそ目的が必要だというのは、恐らく、内向型人間は感性が鋭く繊弱であるため他人や社会からの影響を受けやすく、それによって生活、ひいては人生までも自分が望まない方向へ行きがちになるからこそ、目的を言葉にして明確化して生きることで、迷いなく充実した人生を送れる、ということでしょう。