杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

バルザック『あら皮』

バルザックの長篇小説『あら皮』(小倉孝誠訳、藤原書店、2000年)を読みました。 私はバルザック作品を不定期で一作ずつ読んでいます。バルザックの代表作である本作のことは、何年も前に霧生和夫『バルザック』(中公新書、1978年)で知って以来、ずっと読…

板橋区立郷土資料館特別展「いたばしの富士山信仰―富士講用具と旅した人びと―」

「富士講」に関する資料を多数展示 板橋区立郷土資料館に行き、特別展「いたばしの富士山信仰―富士講用具と旅した人びと―」を見ました。 富士山信仰とは、言葉の通り、富士山を信仰の対象とし、崇拝し、参詣することなどを指します。山岳信仰の一種で、江戸…

板橋区立熱帯環境植物館「熱帯雨林ボルネオ生命の森 -阿部雄介写真展-」

命の饗宴 板橋区立熱帯環境植物館(グリーンドームねったいかん)に行き、開催中の企画展「熱帯雨林ボルネオ生命の森 -阿部雄介写真展-」を見ました。 阿部雄介さんは、ライフワークで熱帯林や野生動物を撮影しているフォトグラファーです。阿部さんの写真は…

「私小説家とは何か?」

私小説家=正直な人? 日本文藝家協会編『新茶とアカシア』(光村図書出版、2001年)を、拾い読みしました。 本書はおかしなタイトルですが、2001年に発表されたエッセイの中から優れたものを日本文藝家協会が選りすぐったもの。著者は、阿川弘之、金重明、…

映画『ユージュアル・サスペクツ』を観た。

母が絶賛した映画 1995年のアメリカ映画『ユージュアル・サスペクツ』を観ました。 監督はブライアン・シンガー、脚本はクリストファー・マッカリーです。いずれも、知りません。 出演はガブリエル・バーン、スティーヴン・ボールドウィン、ベニチオ・デル・…

三人称 鉄塔(賽助)『手持ちのカードで(なんとか)生きてます。』

著者は同年 三人称 鉄塔(賽助)の『手持ちのカードで(なんとか)生きてます。』(河出書房新社、2023年)を読みました。 本書は言わばエッセイですが、通常のエッセイとは違います。河出書房新社の「14歳の世渡り術」シリーズの一冊で、いうなれば中学生の…

島本理生『夏の裁断』

書き下ろしの短篇を含む文庫オリジナル 島本理生の小説集『夏の裁断』(文春文庫、2018年)を読みました。本書の最初に収録されている「夏の裁断」の感想はこのブログの一つ前の記事で書きましたが、本書には同作の後日談となる書き下ろしの短篇「秋の通り雨…

島本理生「夏の裁断」

第153回芥川賞候補作 島本理生の小説「夏の裁断」を読みました。『夏の裁断』(文春文庫、2018年)所収で、初出は「文學界」2015年6月号です。 本作は同年上半期の芥川賞候補となりましたが、受賞したのは又吉直樹「火花」と羽田圭介「スクラップ・アンド・…

蔵書始末記8 積読本

100冊超の積読本を手放した 買ってから長らく「積ん読」になっていたが、このたび部分的に読んだ。どうして読んだかというと、買った時から目次の中に気になっていた箇所があり、今回、その箇所に関連することを考える機会があったからだ。そのことは、目次…

映画『ロスト・キング -500年越しの運命-』を観た。

実話を基にした映画 映画『ロスト・キング -500年越しの運命-』を観ました。 2022年のイギリス映画。日本では今年9月22日に公開されました。 映画館で新作を観たのは久しぶりで、しかも家族に付き合う形でない観賞となると、もう何年ぶりのことだか…。『星の…

宮崎駿『風の谷のナウシカ』

『風の谷のナウシカ』と私 宮崎駿の漫画『風の谷のナウシカ』を読みました。 アニメージュコミックスのワイド判(徳間書店、1995年)で、全7冊。手元の第7巻の奥付を見ると、2023年7月15日116刷となっているので、今も売れ続けているロングセラーであること…

板橋区立郷土資料館「令和5年度 工都展 印刷産業「残す」と「伝える」」

印刷産業にスポットを当てた企画 板橋区立郷土資料館に行き、企画展「令和5年度 工都展 印刷産業「残す」と「伝える」」を見ました。 本展示は、板橋区が2014年(平成26年)から開始した史跡公園整備事業と調査研究の成果を公開する展覧会「工都展」シリーズ…

わたなべぽんの漫画二冊

メタ認知の働き わたなべぽん先生のコミックエッセイを二冊続けて読みました。『ダメな自分を認めたら部屋がキレイになりました』(メディアファクトリー、2015年)と『自分を好きになりたい。』(幻冬舎、2018年)です。二冊とも、わたなべ先生が実体験を元…

佐伯一麦『遠き山に日は落ちて』

第1回木山捷平文学賞受賞作 佐伯一麦の長篇小説『遠き山に日は落ちて』(集英社文庫、2004年)を読みました。 二瓶浩明の佐伯年譜を参照すると、これは「すばる」1995年1月号から1996年4月号まで全14回連載されたものです。妻子と別れ、草木染作家の奈穂と新…

乱読は考えもの…

最近読んだ本から 近頃は少しばかり心身ともに落ち着ける期間があり、シニアライフのようなゆったりとした生活を送っています。 一方で、本への興味はちっとも落ち着きを見せず、あれこれと手当たり次第に手に取り、ページをめくることが続いています。「最…

「文学フリマ東京36」に行ってきた。

文フリ史上最多の出店数 本日、東京流通センター第一展示場・第二展示場で開催された「文学フリマ東京36」に行ってきました。 2021年の「第三十二回文学フリマ東京」(5月16日)に出店者として参加して以来、二年ぶりの流通センターでした。 一昨年はたしか…

「はてなブログの文学フリマ本」に掲載が決まりました。

先日投稿した特別お題「今だから話せること」の記事が、はてなブログの企画「はてなブログの文学フリマ本」に掲載されることになりました。 本企画は、特別お題について書かれたブロガーの記事を一冊にまとめ、5月21日開催の「文学フリマ東京36」で配布する…

じゃこうねずみとスナフキン

「ムーミン」シリーズを読んでみたい 私は「ムーミン」シリーズを読んだことがありませんが、これから少しずつ読んでいこうかな、と考えています。 きっかけは、敬している作家が、「ムーミン」に出てくる「無駄じゃ無駄じゃ」が口癖の哲学者をイメージさせ…

環境の力

最近読んだ本から こんばんは。お久しぶりです。 最近は公私ともに、いや私的にけっこう忙しくて、ブログ執筆が滞っていました。 気がつくと未更新が一か月も続いてしまい、さすがに何か書いて更新したくなりました。そこで、最近読んだ本をネタに書こうと思…

「老成した心」

佐伯の性向の特徴 毎日新聞2021年4月10日(土)朝刊の書評欄「今週の本棚」の一コーナー「なつかしい一冊」は、佐伯一麦によるギッシング『ヘンリ・ライクロフトの私記』(平井正穂訳、岩波文庫、1961年)の紹介が掲載されています。 平井正穂といえば、私は…

脚本を書く映画監督になりたかった。

特別お題「今だから話せること」に参加します。 ここでいう「今だから話せる」は、「過去には話せなかった(明かせなかった)」ではありません。時が経ち、人間的にあるていど成熟したので、山の上の方へ行けば登ってきた山道を眺められるように、当時を振り…

お知らせ

毎日更新から不定期更新へ このブログは2018年3月11日に開始し、1日1記事の毎日更新を徹底してきました。それをこのたび終了し、不定期更新していくことにしました。これまでは、とにかく毎日更新することを継続するため、漠然と考えていることなどでもエッ…

西村賢太「菰を被りて夏を待つ」

文章力の高さ 西村賢太の短篇「菰を被りて夏を待つ」(『無銭横町』(文春文庫、2017年)所収)を読みました。 横浜から要町に引っ越してきた北町貫太が、田中英光の古書に入れ込み、金を注ぎ込んでしまうので家賃も払えず、古書の代金さえも払えなくなる過…

ネットつぶやきの怖さ

誰もがやる可能性がある 佐藤真通原作、富士屋カツヒト作画の漫画『しょせん他人事ですから』2巻(白泉社、2022年)を読みました。 前に読んだ1巻が面白かったので、2巻も購入。とうぜん次は3巻を読みますが、1巻が一冊で完結していたのに対し2巻が途中で終…

クリエイターの人生

最近、いわゆるクリエイターの人生について考える機会がありました。 プロダクション勤務のクリエイターともなると、クライアントの要求を形にするために日々働くものの、経験値は蓄積されますが資産が積み上るわけではありません。花形になって出世できれば…

西村賢太の「敷居が高い」

ある意味で衒学的 西村賢太の短篇「菰を被りて夏を待つ」(『無銭横町』(文春文庫、2017年)所収)は、北町貫多を主人公とした私小説です。文章は主語が「私」でなく「貫多」と三人称で、貫多が横浜から要町の安アパートに引っ越してきたニ十歳頃のことを描…

適応障害の当事者と家族

広く読まれるべき本 精神科医の浅井逸郎監修『心のお医者さんに聞いてみよう わが子、夫、妻…。大切な家族が「適応障害」と診断されたとき読む本』(大和出版、2022年)を読んでいます。 かつて、「適応障害」だと診断され一か月ほど仕事を休んだ人が知人に…

聖書の物語世界

ストーリーとビジュアル サリー・タグホルム、アンドレア・ミルズ『ビジュアル版 はじめての聖書物語』(山崎正浩訳、創元社、2022年)を読んでいます。 世界で最も広く読まれているといわれる「聖書」ですが、私の大学時代の先生は以前、最もよくできた小説…

「人間喜劇」の登場人物

典型的人物たち エンツォ・オルランディ編、山本有幸訳『カラー版 世界の文豪叢書 バルザック』(評論社、1976年)は、いわばバルザックと小説作品のガイドブックのような一冊です。図書館で見つけ、借りてきました。 読んだのは「『人間喜劇』の登場人物」…

宇佐見りん『かか』

理解できない思いと行動 宇佐見りん『かか』(河出書房新社、2019年)を読みました。 良かったです。「かか(母)」への深い愛憎を胸に、19歳の浪人生うーちゃんは、ほとんど崩壊している家族を離れ、孤独で苦しい熊野行きを敢行する。うーちゃんの思いと行…