杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

目と脳の疲労

ここ数日、脳の疲れがひどい。。 パソコンに向かう仕事をしているので、自然と長時間、数十センチ四方の世界に埋没し続けることになるが、最近はこの仕事環境がよくないのではと思っている。 視界が狭い空間に限られると、目の動きが制限され、遠くを見るこ…

『あら皮』の描写

バルザック『あら皮』は長篇だが、その冒頭はバルザックの他の長篇と違い、物語の舞台となる地域を説明する分厚い描写がない。ただし分厚い描写そのものはやはりあり、それが行われるのは、自殺するつもりの主人公ラファエルが入った骨董屋の店内の珍奇な品…

蔵書派から図書館派へ

知的生活のベースとなる本を蔵書するか、図書館に頼るか、という問題がある。知的生活を送り、本をたくさん読もうとする人の多くがぶつかる問題ではないか。電子書籍の読み放題にすればこの問題は半分以上は解決されるかも知れないが、私が求める本は電子化…

ADHD

鈴木輝一郎先生の『何がなんでもミステリー作家になりたい!』(河出書房新社、2019年)を読んでいて、細かいところだがハッとさせられるところがあった。 キャラクターの履歴書を書くのを説明するのに、先生自身の小説『ほどよく長生き死ぬまで元気遺産そこ…

プラネタリウム番組「名探偵コナン 灼熱の銀河鉄道」を観た。

先日、板橋区立教育科学館に行き、プラネタリウム番組「名探偵コナン 灼熱の銀河鉄道(ギャラクシーレイルロード)」を観た。以下ネタバレあり。 宮沢賢治の世界を再現したテーマパーク「イーハトーブワールド」の銀河鉄道列車に乗ることになったコナンたち…

『あら皮』のパレ=ロワイヤル

バルザック『あら皮』(小倉孝誠訳、藤原書店、2000年)を読んでいる。面白い。これは霧生和夫『バルザック』(中公新書、1978年)には1831年発表とあり、『人間喜劇』全作品の中でも重要な作品であるとも記されている。 賭博場で持っている最後のナポレオン…

知的好奇心の矮小化

盆休みに入った。 なにしろ屋外が茹だるような暑さなので、せっかくの連休ではあるけれどあまり外出はしていない。ただし、朝六時くらいに近所の都立公園を歩くと、特に木陰はわりあい涼しくて心地よい。最近は運動不足でもあるので、朝は公園を含む近所を散…

八木義德年譜

古書店で講談社文芸文庫の八木義德『私のソーニャ・風祭』(2000年)を見つけ、ほぼ迷わず購入した。表題作は「わたくしのソーニャ」「かざまつり」と読む。私はこれまで「わたしの…」「ふうさい」と読んでいた。。 本書には「劉廣福」「私のソーニャ」「雪…

佐伯一麦「オーダーメイドのインソール」

「新潮」2021年9月号は創刊1400号記念特大号であり、複数の特別企画が掲載されている豪華な一冊になっている。 「記念エッセイ1」は「わたしの『新しい生活様式』」で、阿部和重や奥泉光や天童荒太などが寄稿し、その一人に佐伯一麦もいる。 佐伯のエッセイ…

佐伯一麦『ミチノオク』第四回 大年寺山

「新潮」2021年8月号に、佐伯一麦の連作『ミチノオク』の第四回「大年寺山」が掲載されている。前回の「飛島」は昨年11月に掲載されたので、九か月ぶりの新作ということになる。 ちなみに2021年8月は「文學界」に佐伯の短篇「うなぎや」が発表された月でもあ…

共感もほどほどに…

高野優『HSP!自分のトリセツ』(1万年堂出版、2019年)のサブタイトルは「共感しすぎて日が暮れて」である。そう。共感するのは悪いことではないが、共感し過ぎてしまうと自分の時間がなくなってしまうのである。時間は人生そのものだから、共感のし過ぎは人…

自分と徹底的に向き合う

先日、複数の同業者と話す機会があり、近ごろの自分の仕事上の課題とか、身近にいる後輩たちにどんな指導をすれば良いかとか、そもそも自分はこの先どうしようと思っているのか、将来の目標は、とかさまざまな話題について言葉を交わした。同業者たちがどん…

大堂の銅鐘

以前このブログに「板橋区の最古刹」というタイトルで、赤塚の大堂について書いた。 その境内にある銅鐘には中巌円月が撰文した銘文が載っていて、古来より風流文人の垂涎の的だった、と私は記した。記事内にその銅鐘の写真も掲載したのだが、どうやら現在の…

「舞台に立つ」

本多信一『内向型人間の仕事にはコツがある』(大和出版、1997年)を読んでいると、著者の本多さんは恐らくHSS型HSPだろうと思えてくる。しかし1997年当時、HSPは少なくとも日本では今ほど一般的ではなかったはずである。もちろん、そういう言葉がなくてもHS…

板橋区立郷土資料館 収蔵品展「板橋のねがい・いのり・くらし―民間信仰と民具・絵馬―」

板橋区立郷土資料館で7月10日から開催中の収蔵品展「板橋のねがい・いのり・くらし―民間信仰と民具・絵馬―」を見てきた。 板橋における民間信仰を題材とした展示で、「人生という旅」「四季のなかで」「年中行事」「縁切榎」といったテーマの下、物や行事に…

elaborate

先だって、第三十二回文学フリマ東京に出品した3作品(『藝術青年』『こぼれ落ちた人』『東京の家族』)を全て買ってくださった方から、それぞれの作への感想をいただいた。ありがたい。 その方は以前からの知人で、私の作品をいくつも読んでいる。長年にわ…

狂乱の時代

石田衣良『波のうえの魔術師』(文春文庫、2003年)を読んでいる。 大学を出たばかりの若い男が謎の老人に雇われ株式市場で取引を始める話だが、読んでいると、ここで描かれている投資の世界は、生き馬の目を抜く獰猛な人間たちが一瞬で大金を得たり失ったり…

後世に残るか。文豪になれるか。

ある人のブログに、ある日本の作家(専業ではない)が50歳を過ぎて書いた作品が現在も読み継がれている事実は、出発の遅い作家を勇気づけるかも知れない、とあった。これを読んで、考えさせられた。 作品が後世に残るかどうかは、現在筆を執っている作者には…

「勉強好きな変人」

時田ひさ子『その生きづらさ、「かくれ繊細さん」かもしれません』(フォレスト出版、2020年)を読んでいる。この本でいう「かくれ繊細さん」とは、HSS型HSPという、好奇心旺盛で行動的なのに繊細で傷つきやすい人を指す。著者の時田さん自身、これまでの人…

サイコパス

TBSのドラマ「ドラゴン桜」が面白かったので、10年以上前の旧シリーズも見ている。先だって最終回を迎えた新シリーズに比べ、東大受験のコツの紹介が多いように感じた。そして、新シリーズよりも面白い。新シリーズは桜木先生がとても「いい先生」に見えたが…

植村冒険館企画展「冒険家・植村直己 単独行とセルフタイマー」

先日、板橋区蓮根の植村冒険館に足を運び、企画展「冒険家・植村直己 単独行とセルフタイマー」を見た。植村冒険館は今年、移転リニューアルする予定になっており、この企画展は現在の冒険館での最後の展示になるとのことだった。 植村直己は「単独冒険」と…

佐伯一麦「うなぎや」

「文學界」2021年8月号には佐伯一麦の短篇「うなぎや」が載っている。これは連作『アスベストス』の「その四」になる作品で、本作をもって連作は完結という情報がネットに出ている。 作品は半私小説ともいうべきものだが、内容はとてもいい。これは連作タイ…

ジョーク

本多信一『内向型人間の仕事にはコツがある』(大和出版、1997年)を読んでいて、ハッとさせられる箇所があった。 内向型は神経質なほどに倫理的で、人の迷惑になるほんのちょっとした罪さえしでかすことはない。内向型はすぐ過敏に反応するが、しかし真実・…

伝言ゲーム・スタンプラリー・椅子取りゲーム

倉貫義人『管理ゼロで成果はあがる』(技術評論社、2019年)は、著者が、組織で働く個人が楽しく仕事をし、組織として圧倒的な成果を出すために試行錯誤した結果をまとめた本。著者は、ソフトウェアの開発会社・ソニックガーデンの社長であり創業者でもある…

板橋区立熱帯環境植物館「熱帯の昆虫と食虫植物展」

板橋区立熱帯環境植物館(グリーンドームねったいかん)で7月13日から8月29日まで開催の特別展「熱帯の昆虫と食虫植物展」を見てきた。 同じ趣旨の展覧会は毎年、開催しているが、ヘラクレスオオカブトやニジイロクワガタが見られるので楽しい。しかしこの昆…

これからも書くぞー。

はてなのブログ書籍化プロジェクトで本を出した人々とKADOKAWAの編集者担当者による座談会。聞き手ははてなの担当者が務めている。 私のブログ歴はまだ4年目だが、ここに出ている本を出した人はいずれも私より長い。なかには10年以上書き続けている人もいる…

くぼりこ「爆弾犯と殺人犯の物語」

第43回小説推理新人賞受賞作。雑誌を買って読んだ。以下ネタバレあり。 主人公の男は高校時から爆弾づくりを趣味にしていて、片方の眼が義眼の女を愛するようになり、結婚する。しかし女は、男がかつて作った爆弾の爆発で飛んだパチンコ玉によって片方の眼を…

「真面目さ」は人的資本

先日も書いた『ナニワ金融道』の運送屋の話だが、読んでいてもう一つ、気付いたことがあった。 運送屋の社長・赤名の保証人になる背口は、真面目でよく働くから、という理由で帝国金融の社長が評価し、保証人として認められるのである。 帝国金融社長は、赤…

失敗は人間性に起因する

本多信一『内向型人間の仕事にはコツがある』(大和出版、1997年)に、内向型の人間が成功する法則として「成功したいなら、まず“我が失敗の研究”から入るべきである。」とある。 なぜかという、失敗とは、どうも「その人の人間性に起因」しているように思え…

トップギアは馬力がない

青木雄二『ナニワ金融道』を読み返している。世の中は人がお金を血と汗で回していて、その人間は欲にまみれた本能的な生き物であることがよく分かる。いや、そういう人間ばかりを描いているのだ。 運送屋の社長が新車を買うために400万円を帝国金融から借り…