杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

2021-01-01から1年間の記事一覧

言葉遊び

米澤穂信『氷菓』(角川文庫、2001年)を読み、もしかしたら著者はジム・ジャームッシュの『ダウン・バイ・ロー』を見て、最後の言葉遊びを思いついたんじゃないかなと思いました。 ネタバレになってしまうので詳しくは書きませんが、勘が良い、推理力がある…

世の人は我を何とも言わば言え 我なす事は我のみぞ知る

坂本龍馬が残した言葉の一つで、中でも有名なものであるらしいです。下の句は谷崎潤一郎の「我といふ人の心はたゞひとり われより外に知る人はなし」と似ていますが、上の句がいいですね。言いたい奴には言わせおけ、という開き直りの気持ちが表現されている…

純粋な生活

もうずいぶん昔、NHKか教育テレビで美輪明宏さんの特集番組が放送されました。その生い立ちや三島由紀夫との関係、同性愛のこと、ヨイトマケの唄のエピソードなどを美輪さん本人が語っていました。 たしかその番組の最後だったと思いますが、美輪さんが、人…

都立赤塚公園の冬の風物詩「雪吊り」今年も。

都立赤塚公園の入り口付近の松に「雪吊り」が施されていました。毎年恒例の行事で、これを見ると冬だなと思います。このブログでも過去に二度、「雪吊り」を写真に収めて記事にしました。 「雪吊り」は元々、リンゴの重みから枝を守るために始まった「リンゴ…

図書館で撮影チームに遭遇

今日、板橋区立高島平図書館に行ったら、立て看板に写真のようなお知らせが掲載されていました。 高島平と周辺のエリアはけっこうドラマとかバラエティ番組にも登場します。町中ではたまに撮影チームを見かけます。ですが図書館での撮影は、私は初めて遭遇し…

ネットと印刷物

井上真琴『図書館に訊け!』(ちくま新書、2004年)は、調べ物と書き物をする人間にとっては必読の書なんじゃないかと思います。中高生にはもしかしたらレベルが高すぎるかもしれませんが、大学生だったら一通り目を通しておくべき本ではないでしょうか。 さ…

そろそろ何かが変わりそうな気が…

今年も暮れてきました。もういくつ寝ると…という時期です。 ライター職をしている中で、会社の経営者にその年の振り返りと次の年の抱負を聞くことがよくあります。今年もそういう企画のインタビューをしましたが、2021年の大トピックはコロナ禍とオリンピッ…

小説アウトロクイズ

イントロ(序奏)の反対はアウトロ(終奏)というそうです。 イントロクイズは、音楽のクイズなどでよくありますが、小説バージョンもけっこうあります。「風の又三郎」や「檸檬」や『坊っちゃん』の書き出しなどは有名なので、よく問題にされていますね。 …

コロナ禍とHSP

Ryota『まわりに気を使いすぎなあなたが自分のために生きられる本』(KADOKAWA、2021年)を読みました。 HSPが心身を消耗することなく社会で生きていけるようになるヒントが多数書かれた本です。アマゾンレビューを見ると、著者のRyotaさんのブログの内容と…

HSP雑感

HSP関連の本を何冊か読みましたが、最近、ふと気づいて考えたことがあります。 「HSPとは『気が付きすぎる人』」という風に、複数の本で紹介されたいたのですが、果たしてそうだろうか、と思ったのです。 最近ではRyota『まわりに気を使いすぎなあなたが自分…

「フリーにはたらく」ってなんだろう?

特別お題キャンペーン「#フリーにはたらく」に参加します。 フリーランス=自由ではない。 私は会社員です。フリーランスでも個人事業主でもありません。ですが、ゆくゆくは自分で事業を起こし、独立したいと考えています。そして、そのために独立の仕方や…

板橋区の大昔

板橋区立郷土資料館で、企画展「再発見!いたばしの遺跡」が10月9日から昨日まで開催されました。 板橋区内には、約4万年も前の旧石器時代からヒトが住み、続く縄文、弥生、古墳時代にもヒトが生活していたことを物語る遺跡がいくつも見つかっています。中で…

HSPと甘えん坊

こないだから読んでいるRyota『まわりに気を使いすぎなあなたが自分のために生きられる本』(KADOKAWA、2021年)。その第2章「HSPさんの悩みを解く6つのカギ」に、「甘えを」が万すると憎しみに変わる」という見出しがあり、考えさせられました。 甘えを我慢…

まず自分。

Ryota『まわりに気を使いすぎるあなたが自分のために生きられる本』(KADOKAWA、2021年)の第1章「HSPは病気じゃない。頑張っても治らない。でもそれでいい」に、「溺れている人は溺れている人を助けられない」という見出しがあります。 そこでは、HSPは他人…

「意識低い系生活」

Ryota『まわりに気を使いすぎるあなたが自分のために生きられる本』(KADOKAWA、2021年)を読んでいます。最近よく見かけるようになったHSP本の一つに数えられると思いますが、著者のRyotaさんはHSPアドバイザーで、自身も強度のHSPであるそうです。 コラム…

十三年かけた短篇集

佐伯一麦の短篇集『アスベストス』(文藝春秋、2021年)は、12月に出たばかりの佐伯の最新作です。佐伯にはすでに『石の肺』というアスベスト(石綿)禍を取材したノンフィクションがありますが、本書は、その取材から喚起されたフィクションになります。 作…

諦めちゃいかん

NHK「逆転人生」の11月22日の放送は「殺人のえん罪を晴らせ 43年がかりの逆転劇」でした。 布川事件で殺人の容疑者として逮捕され無期懲役になった桜井昌司さんが、獄中から手紙を書き続け、桜井さんの無実を信じる弁護士などとともに裁判のやり直しを目指し…

記憶をなくした人

NHKの番組「ねほりんぱほりん」、今シーズンも楽しく見ています。 12月10日は「記憶をなくした人」で、これは以前、正月の放送の時に満島ひかりさんがこの番組で取り上げてほしい人としてリクエストを出したことがきっかけになり、実現したテーマでした。 番…

バスタゼイン

曽野綾子『心に迫るパウロの言葉』(新潮文庫、1989年)を、読みたいところだけを開いて読んでいます。 本は複数の章に分けられていますが、その一つ「神さま、けちけちしないで」は、「気前よくたくさん蒔く者は、たくさん刈り入れる」というサブタイトルが…

図書館の使い方

井上真琴『図書館に訊け!』(ちくま新書、2004年)を読んでいます。これは同志社大学図書館に勤める(少なくとも本書刊行時点で)著者が、図書館利用の「基本から『奥の手』まで」を伝授する本です。図書館に関する書き物をしようと考え、実際に執筆に着手…

シド・フィールド『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと』

シド・フィールド『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと』(フィルムアート社、2009年)を読みました。 著者はアメリカの脚本家で、シナリオ講師でもありプロデューサーでもあります。ジャン・ルノワール、サム・ペキンパーに師事し、『ゴッドフ…

歴史とかみ合わない

野口冨士男「その日私は」(『野口冨士男自選小説全集・上巻(河出書房新社、1991年)所収)は、野口が自身の歴史との関わり方について書いた私小説です。昨日もこのブログに書きましたが、いい味出しています。この渋味が実にいいですね。 小説そのものは19…

野口冨士男「その日私は」

昨日は真珠湾攻撃、つまり日米開戦から80年の日でした。その前日である12月7日の朝日新聞朝刊の「天声人語」は、小説家・野口冨士男の1941年12月8日の行動から書き起こされています。 真珠湾攻撃が報じられたその日、勝利を伝えるニュースから背を向けるよう…

セルフやりがい搾取

このブログで何回か「やりがい搾取」について書きました。これは、経営者が労働者に「やりがい」を強く意識させ、本来支払うべき賃金や手当などを支払わない行為です。 要するに、雇用する側が雇用される側に対し、「うちの仕事はとても楽しいよ」「成長でき…

ポオ「沈黙」

エドガー・アラン・ポオの「沈黙」(『ポオ小説全集2』(創元推理文庫、1974年)所収、永川玲二訳)を読みました。 わずか5ページのごくごく短い作品で、その内容は、悪霊が「ぼく」に、私の物語をきけ、と話し掛けてきて始まります。その物語は、リビアの…

何を読もうか…

師走です。忙しい。忙しいのはいいのですが、どうやら疲労の蓄積がかなりの量に達しているらしく、一週間くらい集中して休みたいと思う毎日です。 とはいえ、繁忙期のピークが過ぎ、仕事納めが視野に入ってきました。連休には読み応えのある長篇に手を出した…

お金のはなし10 マネーリテラシー

先日、ふるさと納税について複数の人に体験談を話す機会がありました。せっかくだから私が話すだけでなく、皆にも話題を振ってみようかなと思い、ふるさと納税をやったことがある人はいますか? と挙手を求めたのですが、数十人いた中で手を挙げたのは一人だ…

江戸川乱歩の若かりし頃

先日このブログに書いた柳川一「三人書房」は、井上勝喜という江戸川乱歩(平井太郎)の鳥羽造船所時代の同僚が視点人物の短篇推理小説です。 小説は井上の、やや情緒的な語り口が特徴ですが、その冒頭に乱歩の『探偵小説四十年』の一節が引用されています。…

仇敵

米澤穂信『氷菓』(角川文庫、2001年)を読んでいて、「仇敵」という言葉を見つけて懐かしくなりました。 主人公の折木奉太郎は、高校の教室で旧友・福部里志と話していて、福部のことを「わが旧友にして好敵手、そして仇敵。…」と形容しています。 その箇所…

地道に書く

シド・フィールド『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと』(安藤紘平、加藤正人、小林美也子、山本俊亮訳、フィルムアート社、2009年)の第17章「書き終えた後」の最後は、「まずは自分の脚本を書くことだ」という見出しがついています。 その中…