佐伯一麦の短篇集『アスベストス』(文藝春秋、2021年)は、12月に出たばかりの佐伯の最新作です。佐伯にはすでに『石の肺』というアスベスト(石綿)禍を取材したノンフィクションがありますが、本書は、その取材から喚起されたフィクションになります。
作品は「せき」「らしゃかきぐさ」「あまもり」「うなぎや」の4篇で、最初の「せき」の初出が「文學界」2008年2月号、最後の「うなぎや」が「文學界」2021年8月号になり、本書は13年の歳月をかけて書き上げた短篇集ということになります。
作家が一つの作品(短篇集を含む)に十年以上の歳月を費やすことは、そんなに珍しいこととは思えませんが、やはり長いなぁと思います。もっとも、佐伯が「せき」を書き始めた時期に完成形をどれくらい具体的に想像していたかは分からず、これから調べていきたいと思います。
表紙絵は加藤智哉の「屋根兎」という作品です。書影はここには掲載しませんが、よく見ると、屋根の上部にウサギの顔があります。
最後の「うなぎや」については、「文學界」に出た後にこのブログで紹介しました。