杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

最近読んだ本

備忘録。先月から今月にかけては公私ともにかなり忙しく、読書の時間をほとんど取ることができなかったのは悔しい限りです。

最近読んだ本・観た映画3

備忘録です。

小説もたくさん読んでいますが、連休は映画やドラマをいっぱい観て、そのせいで映像作品のほうが多くなっています。

映画では『夜明けのすべて』、ドラマでは「ザ・レジデンス」がすばらしかったですね。

「参謀本部の地図」

北村薫『中野のお父さん』(文春文庫、2018年)の収録作の一つ「茶の痕跡」を読んでいたら、こんなセリフに遭遇して、ニヤリとした私。

「あ。地図なら、郵便局に置いてあるんじゃないんですか?」
「ありませんでしたなあ。後から知ったのですが、参謀本部の地図というのがあったようです。しかし、勤め始めた頃は、そんなことも知りませんでした」

これを読んで私は、泉鏡花の「高野聖」の冒頭を思い浮かべたのです。冒頭には、こうあります。

参謀本部編纂の地図をまた繰開いて見るでもなかろう、と思ったけれども、余りの道じゃから、手を触るさえ暑くるしい、旅の法衣の袖をかかげて、表紙を附けた折本になってるのを引張り出した。…

私自身は学校で帝国書院の地図帳をもらいましたが、昔は参謀本部の地図が一般的だったんだろうかな、と思うと同時に、小説の道具が「高野聖」と重なってくるところが、どこか北村薫先生らしいと思ったのでした。

最近読んだ本・観た映画2

相変わらず多忙でブログ更新が滞っています。ひょっとしたら、このブログ自体の存続が危うくなるかもしれません…が、それはさておき、本を読み、映画も観ているので、印象に残ったものをいつものように備忘も兼ねて書きます。

最近読んだ本・観た映画

発信活動をしたいしたいと思いつつ、ちとそれどころじゃない状況でして、とはいえ本を読み、映画も観ているので、印象に残ったものを書きます。備忘も兼ねて。

切ない漫画

齋藤なずな『ぼっち死の館』(小学館、2023年)を読みました。

作者の齋藤なずな先生のことは『別冊ESSE 団地で見つけた身軽で豊かな暮らし方』(扶桑社、2023年)で知り、本作もこの本で知りました。団地における独居老人の死(ぼっち死)に興味があったので手に取ったのですが、団地内で人がいなくなっていくストーリーが切なくて、胸を打ちます。

中でも、「牛の行く」という、妻を亡くした高齢者ライターが出版社に原稿を売り込みに行くエピソードが、いろいろと考えさせられました。というのは、ライターの知り合いが何人もいて、私自身がライター経験者であるので、知り合いや自分の将来の姿を見るような気がしたからです。

あと、各エピソードのはしばしにカラスが登場し、団地住人のやりとりを俯瞰している様子が描かれていますが、私はなぜかこの箇所に深く共感を覚えました。

団地に限らないと思いますが、人間がゴミを出す場所には多くのカラスがいて、カラスたちは人間の動きをよく観察しています。ぼっち死をする人を含め、団地の人間たちの営みをもっともよく知っているのは、カラスなのではないかと思うほどです。

バルザック「金色の眼の娘」

『十三人組物語』第三話

バルザックの中篇小説「金色の眼の娘」(西川祐子訳『「人間喜劇」総序・金色の眼の娘』(岩波文庫、2024年)所収)を読みました。

本作は、「人間喜劇」の「パリ生活情景」の一つ、全三話から成る『十三人組物語』の第三話です。初版は1834年から1835年にかけて刊行されました。

内容は、植民地で生まれた美少女・パキータと、パリ随一の非情な伊達男であるらしいド・マルセーの危険な恋物語です。ド・マルセーには同父異母の姉マルガリータがおり、恋の相手のパキータがマルガリータレズビアン関係(とはいえ、パキータ側が隷属している)にあることを知り、パキータを殺そうとするものの果たせず、パキータの元を去ります。後日、パキータはマルガリータに殺されてしまい、物語は終わりますが、私は「訳者あとがき」を読むまでマルガリータとパキータがレズ関係だとはわかりませんでした…。

私は、バルザック作品は全体的に、大筋は理解できるものの細かい部分が読解できないことが多く、そのせいか、特に短篇や中篇は読むのに苦労します。本作のほか、「ニュシンゲン銀行」なども、読み解くに苦労したものです。ただし、長篇も細部にわたり仔細に理解できているかどうか自信はないのですが、それでもやはり、人間が、情熱ゆえに自滅していく様を描くバルザック作品は読み応えがありますね。

「骨董室」を読んでみたい

余談ですが、本作に出てくる「恋愛の国」というのが面白かったです。これは、恋愛心理が時間の経過とともに変化する過程を地理上の旅に例え、寓意的な地図に表した「恋愛地図(カルト・ド・タンドル)」のことであるそうで、恋愛地図は17世紀初頭にフランスの貴族のサロンで言及されるようになり、マドレーヌ・ド・スキュデリの長篇『クレリー』に登場するらしいです。バルザック作品でも短篇「骨董室」に登場するそうな。読んでみたいですね。