2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧
Eテレの「ねほりんぱほりん」の、漫画同人誌の人たちが出た回を見た。毎度のことながら面白い内容だったが、今回は特に「同人誌」というテーマが私にとって縁あるものだったので、いろいろと思い出しながら、あれこれ考えた。 といっても私の場合は文学同人…
本ブログのアクセス数は、開設以来、微増している。毎日書いているから自然と話題が広がり、はてなのキーワードも増えていて、検索にも引っ掛かりやすくなっているだろうから、少しずつ増えるのは当たり前だと思うが、ありがたいことだ。瞬発力も大事だが、…
朝日新聞10月17日の土曜版「be」には、夏目漱石が「国民作家」として司馬遼太郎、川端康成、芥川龍之介を抑えてトップ(支持率68%)だとあった。芥川が2位なのだが、これは漱石と同様、作品が教科書に載っていることが大きいと思う。新聞にも漱石1位の理由…
この本を読んでくれ、とかこの映画を観てくれ、と人に勧めても多くの人はやらない、とある人が書いていた。これは私も両面で経験がある。つまり、勧めた相手が読んだり観たりしてくれなかったケースと、私自身も勧められて読まなかったり観なかったりしたこ…
こないだ久しぶりに飛行機に乗り、雲海を見た。昔、親に連れられて登山した時に雲海を見て感動したものだが、その日は雨だったこともあって、地上は雲に覆われているけど雲の上は爽やかな晴天だ、とごく当たり前のことを思いつつ感動した。 機内に射し込む光…
レオ・レオーニの彫刻作品「プロジェクト・幻想の庭」(1978年)(手前) 板橋区立美術館で10月24日から開催している「だれも知らないレオ・レオーニ展」を見た。 私はなにしろ『スイミー』や『フレデリック』すらまともに読んだことがないので、レオーニの…
先日このブログでわたなべぽん『やめてみた。』(幻冬舎、2016年)について書いたが、アマゾンレビューを見るとけっこう低評価が目立っていた。本書のポイントは、そもそもやる必要はないけど何かしらの思い込みがあって続けてしまっていたことをやめてみた…
日経新聞9月13日28面の文化欄に、佐伯一麦の随筆「時計草に思う」が載っている。時計草にまつわるさまざまな思い出を語ったもので、佐伯らしい随筆と言える。 佐伯は花鳥風月に対する感性が鋭敏で、時計草について書いたのはこれが初めてではない。この随筆…
佐伯一麦『からっぽを充たす』(日本経済新聞出版社、2009年)の「鳴らない時計が打つ刻」は、黒井千次との思い出を語っている。佐伯は1992年11月に日中文化交流協会の訪中作家代表団の一員として初めて中国を訪ね、各地を旅行したが、その団長が黒井千次だ…
黒井千次の短篇「聖産業週間」(『時間』(講談社文芸文庫、1990年)所収)を読んだ。読んだのだが、なんとも変わった話だった。あまりやる気がなかったサラリーマンがある日いきなり猛然と働き始める、という話なのだが、その主人公と同じサラリーマンであ…
私が小中学生くらいの頃、いや高校でもそうだったが、「がり勉」という言葉が過剰に使われていたように思う。というのは、一生懸命勉強する奴、頑張る奴はダサい、という通念があったのだと思う。 実際、勉強熱心で成績が良い生徒は、けっこう馬鹿にされてい…
こちらが求めていない助言をしてくる人、というのがいる。これについては、YouTubeのビジネス動画やブログで「縁を切るべき人」として紹介されているが、私も過去にそういう人と関わりがあった。どうして求めていない助言をしてくるかというと、まあほとんど…
私は一時期、文学同人誌に参加していたことがある。同人誌活動の一環で、所属する同人誌以外の同人誌の人にもたくさん会った。そんな数多くのいわゆる「同人」の中に、同人誌活動の理想や規則を厳格に貫こうとする人がいた。同人に対し、組織の一員としての…
以前ある先輩から酒の席で、お前もいっちょ土方でもやってみて世間の厳しさを経験しろや、みたいに言われたことがある。サシで飲んでいたのだが、まあ一種のマウンティングだった。その先輩は長いことフリーのライターをやっていて、お金がない時は建設現場…
『罪と罰』のラスコーリニコフじゃないが、自分は正しい人間で、世の中の方が間違っているのだから自分は(世間的には)悪いことをやっても良い、と考えている大人がたまにいる。考えているだけじゃなく、実際に悪いことをして問題になっているのだが、不平…
古井由吉『人生の色気』(新潮社、2009年)を読んでいるが、これは古井からの聞き取りをもとに編集部が文章を構成したもので、佐伯一麦や島田雅彦などが聞く側に同席している。全六章あり、第三章「年をとるのはむずかしい」は、佐伯が同席して2008年12月3日…
わたなべぽん『やめてみた。』(幻冬舎、2016年)が面白い。というより、私のような人間にはけっこうためになる。たしか、ビジネス書か自己啓発書の類いをアマゾンで見ていた時に、その本を買った人は他にこんな本を買った、という紹介の中に出てきて、興味…
芦田愛菜主演の映画『星の子』を観た。私は『こちらあみ子』を読んで、今村夏子はすごいと思っていたので、この原作も読もうと思っていたし、映画も観たいと思った。 芦田愛菜演じる主人公・ちひろの家族は、ちひろが小さな頃から新興宗教に入っている。病弱…
冒険家の植村直己は、43歳で遭難するまでの約15年間、板橋区に住んでいた。板橋区には、植村の活動を伝える装備品や写真、冒険に関する本の貸し出し、自然体験の事業の主催などをする「植村冒険館」がある。2021年には東板橋体育館と複合化してリニューアル…
ときどきお邪魔しているブロガーの記事の中に、佐伯一麦の『散歩歳時記』(日本経済新聞社、2005年)について触れているものがあり、これは恥ずかしながら未読だったのでこのたび手に取った。少し前に古書店で買ったきり積ん読になっていたのだが、じっくり…
牧子は四十を迎えたこのごろになって、ようやく、自分の蹉跌の多かった運命の根は、人並みより豊かな母性の機能を恵まれた軀の中に、おびただしすぎる娼婦性の情緒を棲まわせている矛盾を軸として、不器用にぎくしゃく廻ってきたのだと悟ったようだ。 瀬戸内…
佐伯一麦『からっぽを充たす』(日本経済新聞出版社、2009年)を読んだ。佐伯の伝記的事実を確認しながら丹念に読んでいったので、読み終えるまでに時間がかかった。 本書は、河北新報朝刊に2004年4月6日から2008年1月22日まで連載された随筆をまとめたもの…
佐伯一麦『からっぽを充たす』(日本経済新聞出版社、2009年)の「男と女は五分と五分」は、高山文彦による中上健次の評伝『エレクトラ』(文藝春秋、2007年)を取り上げている。佐伯は本書を、上京した折に編集者から紹介されてむさぼるように読んだようだ…
佐伯一麦は高校時代、吉祥寺にあった埴谷雄高の家に同人誌「青空と塋窟」を届けたらしい。今回、大倉舜二『作家のインデックス』(集英社、1998年)を読み、埴谷雄高の吉祥寺南町の家が載っていたので、ここかも知れないと思った。もちろん、吉祥寺内で引っ…
大倉舜二『作家のインデックス』(集英社、1998年)は、大倉が作家と書斎や持ち物などを撮影した写真集で、「すばる」で1990年から1995年まで連載した巻頭企画を一冊にまとめたものである。瀬戸内寂聴や中上健次、三木卓、宇野千代、島田雅彦、古井由吉など…
佐伯一麦『からっぽを充たす』(日本経済新聞出版社、2009年)の「その輝きをレンズで」は、東大寺二月堂のお水取りを切り口に、奈良への思いが綴られたものだ。佐伯は、テレビの企画や雑誌の原稿を書く仕事をしていた二十歳前後の頃、月に一度ほど関西に出…
板橋区立郷土資料館では10月1日からコレクション展「いたばしの文化財」を開催している。これは、東京都で毎年11月3日の文化の日の前後に行っている、都内の文化財の一斉公開「東京都文化財ウィーク」の一環で開催したもの。 今回は「稲荷台遺跡」(1984年登…
フリーのライターと言えば、小説家も同じようなものだが、作品という名刺を持っている。その名刺すらも持たないのがフリーのライターだと、酷な言い方をすればできた。商売柄、そういう連中の取材を受けたりすることもある。 フリーがいいのか悪いのか、私に…
北方謙三「襞」(『帰路』(講談社文庫、1991年)所収)は、浮気をした友人が、浮気相手の女が妊娠したと思い込み(実際は妊娠しておらず、生理を口実に友人を困らせていた)、その処理を主人公である作家の「私」に依頼してくる話である。友人の依頼内容と…
手元にあった「文藝」2011冬号は、第48回文藝賞受賞作「クリスタル・ヴァリーに降りそそぐ灰」を掲載しているのだが、他に掲載されている小説の中に中村文則の短篇「セールス・マン」があった。中村文則っていわゆるセールス、企業での販売や営業の経験あっ…