2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧
まぁとにかく、人生っちゅうのは次から次へと問題が降ってきて大変である。物書きとして晴耕雨読の生活を送るのを夢見る私としては、こんなはずじゃなかったどころの騒ぎではない。お前は実際どんな問題に悩まされてんだと、この文章を読む人は思うだろうが…
11月1日の記事「佐伯一麦『懐かしい現実の手応え』」の解釈について、ある方からTwitterでコメントをいただいた。率直に言って、その方の解釈は的を射ていると思えた。私は、さらっと読んだだけで理解が浅かったなぁと反省した。その方には、感謝している。 …
先日、ある経営者の話を聞く機会があり、そこでその経営者が「啐啄同時」という言葉を使っていた。新しい商品やサービスは、いかにすばらしくても必ず受け入れられるとは限らず、消費者がそれを望み、市場にニーズがある時に出すことで初めて受け入れられる…
レオナルド・ダ・ヴィンチの言葉に「幸運の女神が来たら、迷わず前髪をつかめ。後ろ髪はないのだから」というのがあったと記憶するが、これは機会を逃すことなく捕まえろ、といった意味であり、人生を積極的に前進させようとする態度のように思える。 一方で…
北村薫『空飛ぶ馬』(創元推理文庫、1994年)の「砂糖合戦」の冒頭に、こんな文章がある。 渋谷に出て来たのは、ゴーガンの映画をやっているとかいう話を前に友達から聞き、それを昨日の夜、突然思い出したからだ。もう終わったのかどうか、本当に渋谷だった…
北村薫『空飛ぶ馬』(創元推理文庫、1994年)を読んでいるが、推理が面白いだけでなく、背景にある作者の文化全般の教養の豊かさが、読んでいて楽しい。 「織部の霊」は、古田織部に関する、大学の先生の過去についてのミステリーなのだが、主人公と先生がコ…
議論というのは、ある議題について複数の人間が意見を交わし、何らかの決着をつけるためにするものと思う。議論を交わすうちに相手の考えがだんだん明確になっていき、お互いの意見が合致していい感じになることもあれば、相手の考えが自分とは相容れないも…
Eテレ「ねほりんぱほりん」は今シーズンも面白い。こないだはウィキペディアンがテーマで、本物のウィキペディアン2名が登場した。 調べて書くことが心底好きな人らしく、私と同じである。調査と記事執筆は完全なボランティアだというが、中には一つの記事を…
今日はちょっと…抽象的で固いタイトルになってしまったが(いや毎回かなり固い)、この大人であれば当然つきまとう二つのことを、最近よく考えているので、書いておこうと思った。 人間は家庭を形成すると、毎日、家族と何気なく一緒に過ごし、次第に馴れ合…
社会人として生きていて常々感じるのは、世の中は結果とか成果が全てなんだな、ということだ。自分が「頑張っている」ことを評価してほしいと思っているらしい人にしばしば出くわすのだが、頑張っていること自体は素晴らしいかも知れないけれども、それで評…
佐伯一麦『散歩歳時記』(日本経済新聞社、2005年)の「麦イカ」(初出は山形新聞2003年8月12日夕刊)には、たくさん釣ったスルメイカを分けてくれた佐伯の幼馴染の「M」のエピソードが載っている。 不動産会社に勤めていたMは、目下のところ失業中の身であ…
愛知県の私立高校、三重県の私立大学を卒業した後に神奈川県の映画の専門学校を卒業して、それ以降は零細、中小企業でライターをやっている。以上がごく簡単な私の履歴なのだが、最近よく感じるのは、自分にはいわゆる「青春を謳歌した」経験が欠如している…
西野精治『スタンフォード式最高の睡眠』(サンマーク出版、2017年)を読んでいる。初版発行から四か月余りで19刷になっているので売れたのだろう。プロローグに「睡眠とは最強の味方であり、敵に回すと最悪な恐ろしい相手」とあり、なるほどそうなのか…と思…
恥ずかしながら、大人になってから気づいた。自分を磨く、人生を進展させる、といったことをするのに何が必要かというと、勉強、練習、試合の三つにだいたい集約されるのではないかということだ。 勉強が不可欠だということは、前から分かっていた。その次に…
佐伯一麦『散歩歳時記』(日本経済新聞社、2005年)の「めひかり」には、佐伯が東京からやってきた編集者と自宅で宴を開き、「めひかり」という小魚などを御馳走したエピソードが出てくる。 その編集者は東北大学で電子工学を学び、後に編集者になった異色の…
立花隆『「知」のソフトウェア』(講談社現代新書、1984年)は物書きをやる上で有益な情報が多いので、たまにページをめくって気になるところを読み返している。 その中に「ある“整理マニア”の悲喜劇」という小見出しがついた文章があるのだが、これは東京に…
佐伯一麦の『遠き山に日は落ちて』(集英社文庫、2004年)の池上冬樹による解説を読んでいたら面白い箇所があった。 主人公斎木の周辺の人物に目を転ずると、小学二年の息子(八三頁)は『鉄塔家族』では十四歳の家出少年として出てくるし、仙台の居酒屋の女…
最近は数独をよくやっている。景品付きの問題がたくさん載っている雑誌も買うが、空き時間にアプリで軽く脳トレするイメージでやることの方が多い。 そう。数独は脳にいいらしい。アプリの宣伝文句として頭が良くなる、といった言葉が出ている。実際、電車に…
このブログで過去に数回言及した北方謙三「かけら」(『帰路』(講談社文庫、1991年)所収)だが、学生時代からの友人同士である作家と作家ワナビの関係を繊細に描いていて、すごくいい作品だと思う。 登場人物は主人公である作家と、元編集者でフリーライタ…
アイデアがどんどん湧いてくることがある。私の場合は、よく晴れた昼間に屋外を歩いている時などにパッと思いつくようにアイデアが出てくる。懸案事項を突破できるアイデアの出現そのものがまず嬉しく、そのアイデアを実現しようと意欲も湧いてくるので、こ…
「新潮」11月号には佐伯一麦の連作『ミチノオク』の第三回「飛島」が掲載されている。第二回の「貞山堀」が2月号だったので、実に九か月ぶりの新作掲載である。 「飛島」とは山形県酒田市に属する日本海の離島だが、友人のカメラマンからその飛島で拾ったと…
北方謙三「かけら」(『帰路』(講談社、1991年)所収)を読んでいて、面白い箇所があった。主人公は現在は作家なのだが、15年ほど前の大学卒業後はまだ芽が出ておらず、当時広告代理店に勤めていた友人からPR誌の雑文執筆や編集の仕事を頼まれてやっていた…
以前読んだ築山節『脳が冴える15の習慣』(生活人新書、2006年)が面白かったので、同じ著者の『脳と気持ちの整理術』(生活人新書、2008年)も買ってぱらぱら読んでいる。思考を整理し、前向きな気持ちを養い、アイデアを生み出すヒントが書かれた本である…
前にこのブログで、周りから馬鹿にされる人というのは、言う必要のない余計なことを言ってしまている人ではないか、と書いた。やはり沈黙は強いと思う。 これについて最近思い出したのがウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』(野矢茂樹訳、岩波文庫、2003年…
自宅には過去の文藝雑誌が何冊かある。目的なく気が向いて買っただけのものが多いのだが、その中に「群像」2016年6月号があり、第55回群像新人文学賞の受賞作が発表されているので、恐らくこれに気が向いて買ったのだと思う。ちなみにその当選作は岡本学「架…
黒井千次の「時間」(『時間』(講談社文芸文庫、1990年)所収)を読んでいるのだが、主人公はそんなに特徴ある人ではなく、その悩みというのもさほど大したことないはずなのに、心理的な葛藤をこれほどまでに語彙を駆使して表現しようとするのもすごいなぁ…
ビル・バーネット&デイヴ・エヴァンス『LIFE DESIGN スタンフォード式 最高の人生設計』(千葉敏生訳、早川書房、2017年)を読んでいる。自分の人生の「現在地」を知り、そこからライフデザインのスタートを切るために、まず人生を健康、仕事、遊び、愛の四…
佐伯一麦は「川の子」と自認している。海の子、山の子、という言い方に倣った自己認識なのだが、実際に広瀬川、神田川、妙正寺川、多摩川、利根川、渡良瀬川、といった川の近くに住んでいる。 もっとも、考えてみると文明というのは古来より川に沿って形成さ…
ビル・バーネット&デイヴ・エヴァンス『LIFE DESIGN スタンフォード式 最高の人生設計』(千葉敏生訳、早川書房、2017年)は、言うなれば人生設計(ライフデザイン)の指南書で、自分の人生を進捗させ、充実させるためにどうすればいいか、といったことが書…
佐伯一麦の「懐かしい現実の手応え――古家に住まう」は、朝日新聞1994年8月18日夕刊に掲載された随筆で、『散歩歳時記』(日本経済新聞社、2005年)に収められているのだが、これがすごくいい。北蔵王の山麓にある、早くに妻を亡くした老人の古家を老人の死後…