杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

「バルザックのように」

北村薫『空飛ぶ馬』(創元推理文庫、1994年)を読んでいるが、推理が面白いだけでなく、背景にある作者の文化全般の教養の豊かさが、読んでいて楽しい。

織部の霊」は、古田織部に関する、大学の先生の過去についてのミステリーなのだが、主人公と先生がコーヒーを飲んでいる時、バルザックの名が出てくる。先生が美味いコーヒーをつい飲み過ぎてしまう、と言ったのに対し、主人公が「バルザックのように」と思って言いかけるが止めるのである。

バルザックの、コーヒーを牛飲して長時間にわたり書き続ける執筆スタイルは有名である。私はいちおう、そのことを知っているが、知らない人は「?」がついたまま通り過ぎるかも知れないが、それでももちろん問題ない。そういう箇所はいくつもあり、私も、気づきもせず通り過ぎている箇所がありそうだ。