杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

取材力

NHK「ファミリーヒストリー」10月25日の放送は俳優・堤真一だった。 私は最近、青木雄二原作のテレビドラマ「ナニワ金融道」をDVDで観て、堤真一が肉欲棒太郎を好演していたのが印象に残っている。他に大河ドラマにも出ていたし、朝ドラにも出ていたし、他に…

困難は分割せよ

デカルトが『方法序説』でそんなことを述べているらしい。『方法序説』は岩波文庫を持っているが読んでおらず、他人がそう言っているのを聞いた。またブルーノ・ムナーリ『モノからモノが生まれる』(みすず書房、2007年)の冒頭で、『方法序説』の該当箇所…

筆歴

ふと思い立ち、自分の筆歴を振り返ってみた。初めて漫画を描いたのは小学一年か二年の頃で、高校までは漫画ばかり描いていた。大学に入ると脚本家兼映画監督になりたいと思うようになり、日本シナリオ大賞に応募したし、映画学校に入ってからもシナリオを何…

ポオの筆力

ポオ唯一の長篇「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」(大西尹明訳『ポオ小説全集2』(創元推理文庫、1974年)所収)は、平たく言えばピムの船旅の話なのだが、ポオの異常なまでの筆力による分厚い描写がすさまじく、読んでいると自分も…

佐伯一麦の「自画像」

昨日書いた佐伯一麦の「二十代の自画像」は4ページの随筆だが、前半はゴッホに触れ、後半では寺田寅彦や松本竣介について書いている。それは、作者の眼が、自画像を鏡像から正像に昇華するまで洗練する過程についての、佐伯独自の考察になっている。 画家が…

佐伯一麦とゴッホ

佐伯一麦の名は、麦畑の絵を多く描いたゴッホにちなんで付けられた。このことを佐伯はこれまでに何度も随筆などで述べているが、佐伯がゴッホの絵に初めて接し、衝撃を受けたのは1976年、高校二年の頃である。そのことは、二瓶浩明による佐伯年譜に記されて…

バルザックとゴッホ

ある作家の研究をする過程で、エミル・ベルナール編、硲伊之助訳『ゴッホの手紙(上)』(岩波文庫、1978年改版)を読んでいる。 これはベルナール宛の書簡を編んだものだが、その第十四信(1888年8月初旬)には、ドガが精力的かつ没個性であることに関して…

Arrested at last.

「………Arrested at last.………」 これは谷崎潤一郎「秘密」に出てくる言葉である。「ついに逮捕した。」という意味だそうで、小説に出てくる活動写真の台詞と思うが、主人公がかつて関係した女と会い、女が耳元で囁いてくる言葉でもある。 私はかれこれ三年ほど…

佐伯一麦と石濱恒夫

佐伯一麦は十九歳の頃、フリーの雑誌記者として作家の石濱恒夫を取材したことが、『とりどりの円を描く』(日本経済新聞出版社、2014年)の「まぼろしのヨット」に書かれている。 すでにこのブログで何度も書いたが、佐伯は上京したての十代から四年ほど、「…

佐伯一麦と明屋書店

佐伯一麦の随筆集『とりどりの円を描く』(日本経済新聞出版社、2014年)の「触読」を読み、味わいがあっていいなぁと思った。 「触読」は、佐伯が仙台から上京したての十八歳の頃に書店員のアルバイトをしたエピソードが紹介されている。書店では毎日必ず担…

現物にあたる

前にもこのブログで書いたかも知れないが、ようつべのビジネス系動画などでは、ヒット本の紹介がよく行われている。そして、それを見たユーザーが、この動画は本の内容がとても分かりやすくまとめられている、といったことを書いているのをよく見かける。 し…

「めちゃくちゃ」の使い方

Twitterのタイムラインを見ていたら、あるツイートで手が止まった。 本を読んで、めちゃくちゃ面白い、といった感想を述べる人の「めちゃくちゃ」の意味が理解できない、というツイートである。 気になったのでこのブログで検索してみたら、めちゃくちゃ面白…

「厄介な奴ら」

佐伯一麦『とりどりの円を描く』(日本経済新聞出版社、2014年)の「小川の文学」に、佐伯が若手作家の頃に参加していた勉強会「奴会」のエピソードがちょっと出ている。 「小川の文学」は、小川国夫と中沢けいと佐伯が志賀直哉の文学についての鼎談をしたこ…

『文藝年鑑』渉猟

ある小説家のことを根掘り葉掘り調べている。いつか何らかの作品にまとめることになると思うが、今はその小説家の事績をなるべく多く集めているところで、『文藝年鑑』を渉猟中である。 これまでもその小説家の単行本、文庫の類いを読み、雑誌にのみ出ている…

『DEATH NOTE短編集』を読んだ。

大場つぐみ原作、小畑健作画の漫画『DEATH NOTE短編集』(集英社、2021年)を読んだ。『DEATH NOTE』のスピンオフで、夜神月以外の「キラ」が出てきて、それぞれあっけなく死ぬ。ほか、「L」の過去や一日の過ごし方、「ジャンプ」に2003年に掲載された短篇も…

ドーパミン、オキシトシン、セロトニン

先日たまたま、樺沢紫苑『精神科医が見つけた3つの幸福 最新科学から最高の人生をつくる方法』(飛鳥新社、2021年)を紹介している動画をようつべで見た。 実際に読んでいないので確定的なことは言えないのだが、本書によると、ドーパミン、オキシトシン、セ…

ポオの描写力

エドガー・アラン・ポオの「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」(大西尹明訳『ポオ小説全集2』(創元推理文庫、1974年)所収)を読んでいる。 これはポオ唯一の長篇小説で、私は学生の頃にポール・ツヴァイク『冒険の文学』(中村保男訳…

ワナビに悲しむ暇はない。

私見だが、ワナビの多くは、学生時代にワナビを卒業することなどできず、会社勤めをしながらワナビであり続けるのではないだろうか。もし学生時代にワナビを卒業できてしまったのだとしたら、その人の「ワナビ度」はその程度のものだったんだと思う。つまり…

休息と睡眠

知的作業をするには休息と睡眠を十分にとり、仕事に集中できるよう身辺をできるだけ簡素にすることが大切だと思う。 というのは、最近ようやく、調べ物と書き物の熱がふたたび上がってきた。それまで公私ともにけっこう慌ただしく、かといって休息もよくとれ…

板橋で開発されたステンレス製流し台

BSで再放送されたNHKの「プロジェクトX 妻に贈るダイニングキッチン」を観た。日本住宅公団による戦後の住宅供給の裏にあった「ダイニングキッチン」開発の挑戦を描いたもの。面白かった。番組ナレーションでは、公団の住宅計画部課長を務めた尚明(しょう・…

「人生の門出」

北村薫『六の宮の姫君』(創元推理文庫、1999年)を読んだ。 芥川龍之介の王朝物の短篇「六の宮の姫君」の成立事情を調査と推理で追究する内容で、いうなれば書物の世界の探検記である。面白かった。内容からして、文学の玄人向けの作品と言えるだろうが、女…

金融道

中居正広主演のテレビドラマ「ナニワ金融道」を全て観た。これは1996年に放送されたもので、主題歌はウルフルズの「借金大王」である。この歌、いい。 原作からドラマにするにあたり、けっこうアレンジが加えられたのはこのブログで前にも書いた。私は原作の…

『勝手にしやがれ』と『気狂いピエロ』

映画に血道を上げていた頃、ヌーヴェルヴァーグの作品もいくつか観た。 それは、私の実感では映画青年の宿命とも言うべきもので、もし若い人が脚本家や監督などのワナビになったら、「ヌーヴェルヴァーグ」の作品群は一度は通過しなくてはならない関門の一つ…

俳優になりたかった

ある人がブログで、自分が一瞬だが俳優になりたいと思っていたことを書いていた。それを読み、そういえば私も短いが俳優を目指していた頃があったなぁ、と思った。とはいえ「一瞬」ではなく、いちおうオーディションを受け、合格して舞台にも立ったのである…

書物の世界の探検

北村薫『六の宮の姫君』(創元推理文庫、1999年)は推理小説だが、書物の世界を探索して真実を追究するストーリーになっている。その過程は、言うなれば伝記的な文学研究の過程のように見え、面白いし参考にもなるのである。 私は文学研究の真似事をしていて…

人間と神の関係

本多信一さんの本で紹介されていたことから曽野綾子の『心に迫るパウロの言葉』(新潮文庫、1989年)を読み、さらにキリスト教に興味が出てきたので、曽野『[図解]いま聖書を学ぶ』(ワック、2011年)を読んでいる。 私は無宗教者だし、いわんやキリスト教…

谷崎潤一郎と異化と虚点

先日、谷崎潤一郎の『文章読本』(中公文庫、1996年改版初版)を読み返す機会があった。初読は、奥付の私自身によるメモを見ると2003年になっているので、もう二十年近くも前になる。 谷崎については一時期集中的に小説や研究書・評論の類いを読んだが、それ…

心を亡くす

「忙」の字はりっしんべんに「亡」と書くので、つまり「心」を「亡くす」という意味だと、過去に何度か聞いたことがある。要するに、あまりに忙しいと「心ここにあらず」の状態になってしまい物事に落ち着いて取り組むことができなくなり、その結果、同僚は…

板橋区立熱帯環境植物館「穀物展」

板橋区立熱帯環境植物館(グリーンドームねったいかん)で9月14日から10月3日まで開催した「穀物展」に行ってきた。 お米や小麦、雑穀などについて紹介するという展覧会。小規模かつ地味な展示だったが、穀物に関するクイズがあり、SDGsなどについても学べる…

内向人間

榎本博明『内向性だからうまくいく』(日本実業出版社、2002年)は、内向的な性格の人が自分を受け入れ、長所をうまく活かして生きていくための助言をする本。章ごとでテーマが分けられ、助言を述べる節が一つにつき2ページでまとめられており、読みやすい。…