佐伯一麦は十九歳の頃、フリーの雑誌記者として作家の石濱恒夫を取材したことが、『とりどりの円を描く』(日本経済新聞出版社、2014年)の「まぼろしのヨット」に書かれている。
すでにこのブログで何度も書いたが、佐伯は上京したての十代から四年ほど、「蟠竜社」という会社にフリーライターとして所属し、記者として活動していた。当時のエピソードは多々あるのだが、いろんなところに書かれていてまとめられていないので、いつかまとめてみたいものだと思う。
さて「まぼろしのヨット」では、佐伯が大阪まで「作家」を取材しに行き、その後、自分が作家志望だと話したら飲みに誘われ、道頓堀の洋食屋で「びふかつ」を食べたことが記されている。石濱は最後まで「作家」という書き方をされており、最後に名前が出されている。
石濱は「らぷそでい・いん・ぶるう」という小説で芥川賞候補になったことがあるのだが、当時の佐伯はその小説と、安岡章太郎の『良友・悪友』を通して本人のことを知っているのみだったという。
それにしても、佐伯はフリーライター時代にけっこう色んな有名な人と邂逅している。まとめてみたい。