杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

沼は物書きの始まり

岡元大『まちかどガードパイプ図鑑』(創元社、2023年)を読みました。

内容は、タイトルのとおり全国の街角のガードパイプを写真付きで紹介しまくるというものです。紹介されているガードパイプは、「花モチーフ」「木モチーフ」などモチーフの種類別に分類され、さらに構造の特徴を7タイプで分けた「ルックス分類」、所在地、撮影年月日、撮影者、情報提供者の他、紹介文も掲載されています。その他、「鋼製防護柵協会」という「ガードパイプの有識者」や月刊雑誌「地図中心」編集長の小林政能との対談、ガードパイプのコラムが多数掲載され、面白い一冊になっています。

私は個人的にはガードパイプがそんなに好きなわけではありませんが、読んで思わずニヤニヤしました。

本書で紹介されている「いたばし花火GP」は近所にあり、日常的に見ているガードパイプだからです。ちなみにこのガードパイプがある交差点は、毎年夏に荒川で行われる「いたばし花火大会」を見に行く時に必ず通る場所であり、だから花火をモチーフにしたのだろうと思います。ちょっとうれしくなり、外出ついでに撮影してしまいました。

最近は「沼る」なんて言葉をよく聞きますが、沼は物書きの始まりなんだろうな、と思いました。変態的なまでに一個の物事に執着し、愛すると、やがてその中に一つの世界が見えてきて、それは際限なく広がり、深まっていきます。そして、その世界にどっぷりと「沼る」と、ゆうに本を一冊書けるくらいの情報と知見が蓄積するというわけです。

それだけではありません。鋼製防護柵協会や雑誌編集者との対談は、著者がガードパイプ道を突き進んだからこそ生まれた企画といえるでしょう。ガードパイプへの思いが新たな縁を生んだのだと思います。いうなれば沼は、生活を彩り、人生すら変革する「異世界への扉」なのかもしれません。

私も、一般の人なら誰も見向きもしない、変態的な調べ物と書き物をしていましたが、最近はちょっとお休みしていました。本書を読み、また再開したいなぁ、と思った次第です。