杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

“Glück auf!”

ライターとして、これまで数えきれないほど工場の取材に行った。その中のいくつかの現場では、工場内(あるいは事業所内)で使われていたのが、「ご安全に!」という挨拶だ。

その挨拶を最初に知ったのは、たしか文章を通してのことで、鉄鋼メーカーか何かの会社で使われていたと記憶している。私の仕事の通常の挨拶は「お疲れさまです」なので、ほぉこんな挨拶の言葉があるんだな、といささか驚いたものだが、別のところでまた聞いて、そういうのを何回か経験すると、「へぇこの会社は『ご安全に!』なんだな」と思うようになった。

朝日新聞の土曜版「be」2月22日の飯間浩明「街のB級言葉図鑑」に、この「ご安全に」のことが紹介されていた。元々は、ドイツの炭鉱労働者が使っていた言葉だと関西電力のホームページで紹介されている、と書かれている。

https://www.kepco.co.jp/sp/energy_supply/supply/ichiisenshin/approach/goanzenni.html

元のドイツ語は“Glück auf”だとのこと。郁文堂の独和辞典を見てみると、「ご無事で(鉱山で入坑者を送る挨拶)」と用例説明がある。なるほど。日本でも鉄工所とか危険を伴う現場で労働者同士の挨拶として使われているのに納得できる。

ちなみに同書の“Glück”の項には“Glück ab!”の用例も載っている。同じく「ご無事で」を意味するが、こちらは「飛行機の搭乗員を送る挨拶」とのこと。また“Glück zu!”は「幸運を祈る、しっかりやれよ」という意味らしい。