杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

職業でなく状態

本の雑誌」3月号の鈴木輝一郎「生き残れ!燃える作家年代記⑪心がけ編」を読んで、うんうんと頷いた。

鈴木氏は「小説家には定年はないが明日もない」と書き、小説家が仕事を辞める理由は次の三つしかない、と書く。すなわち、

一、書けなくなって筆を折るか
二、売れなくなって次が出せなくなるか
三、死ぬか

である。ワナビは「二」すらないが、たしかに物書きは職業ではなく、固定給も保証されない世界で、物書きとしての「意志」が絶たれればそこで終了なのだろう。

末尾の方では北方謙三先生がダイエットをしたエピソードが紹介されている。鈴木氏が理由を聞くと、北方先生は、まだ書きたいものがあるから今死ぬわけにはいかない、と答えたそうな。

最後はこう締めくくられている。

 作家とは、職業ではなく状態なんでござる。

以前、映画学校で教わった先生が、「映画監督ってのは姿勢なんだ」と言っていたが、つまり職業じゃなく状態だということだろう。リルケも「作家になれるかなど聞くな。書くことが何より好きなら、君はすでに作家だ」と言ったという。要するに状態なのだ。