杉本純のブログ

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萩原葉子とダンス

萩原葉子の『蕁麻の家』(講談社文芸文庫、1997年)を読んでいます。これは萩原の自伝的長篇小説で、『閉ざされた庭』『輪廻の暦』を含む三部作の第一作です。

『蕁麻の家』は私小説で、萩原自身の小学校から21歳までの経験を描いたもの。講談社文芸文庫の「著者から読者へ」には、萩原は本書を書くにあたり「これだけは書かずに死ねない。暗闇の中へ葬っては、いけない」と胸に誓っていたことが書かれています。この執念…。私小説はこうでなくては、と私は思います。

本書は、いわば主人公の嫩(ふたば)の青春物語ですが、祖母からはひどい精神的虐待を受け、知り合って間もない男からはほとんど強姦のような行為をされるなど、「青春」というにはかなり過酷なものです。特に祖母の虐待は多分に差別的であり、陰湿でもあります。

萩原には、赤面ドモリ、対人恐怖症、自閉症的性格があったそうですが、本作が事実を描いたものならば、萩原のそうした症状には、若く多感な時期に大人から酷い扱いを受けたことが少なからず影響していたのではないかと推察します。

本書の全体的な感想はまた後日書くとして、私は、萩原が1976年に「新潮」へ本作を掲載した後、ダンスを恋人として生き、人生観が変わり、対人恐怖症も克服していった、というエピソードがとても興味深いですね。

運動は鬱や適応障害の治療に効果があると聞いたことがありますが、萩原のエピソードは、運動には人生すら変える力があることを物語っているように思います。