2019-02-01から1ヶ月間の記事一覧
最近、朧げながら確信を持ったのは、「人間は自分の器に収まらない仕事はできない」ということ。 それは、或るライターが書いたインタビュー記事を読んで思った。記事は対象者の半生や仕事観を述べたものだったが、対象者が何を志向し、環境にどのように反応…
山路を登りながら、こう考えた。 智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。 漱石「草枕」の冒頭だが、勤め人をしながら周囲の人を虚心に見ていると、上記二行目の四つのセンテンスのような思いに浸され…
先日、長いこと実家に置いていた長篇シナリオを私の自宅に送ってもらった。 シナリオは「東京放浪記」というタイトルで、私が日本映画学校の一年生だった時期に書いたもの。到着した日に再読してみて、そのあまりに幼稚な内容に啞然とし、やがて失笑した。 …
磯崎憲一郎による朝日新聞の「文芸時評」(1月30日)の最後に、黒田夏子の「山もどき」(「文學界」2019年2月号)が紹介されている。 「山もどき」は、「富士塚」をめぐる老人の回想を描いた掌編。富士塚とは、富士山登拝を目的に組織された「富士講」の人々…
芥川龍之介の小説は、新潮文庫に入っているものはたぶん全部読んだと思う。大学時代か専門学校時代にまとめて読んだ記憶がある。 芥川は一般的に「文豪」と呼ばれている。だからその小説はいずれも傑作に違いないと昔の私は考え、傑作だと思おうと思って文庫…
田島隆雄『読者の心をつかむ WEB小説ヒットの方程式』(幻冬舎、2016年)を読んだ。 私が最初にWEB小説を書いたのは2005年だと記憶しているが、あるサイト内の一コンテンツとして掲載したのであり、投稿サイトに投稿したのではなかった。 当時、私はある文学…
連載23回目。 →「名前のない手記」(23) →「名前のない手記」(22) →「名前のない手記」(21) →「名前のない手記」(20) →「名前のない手記」(19) →「名前のない手記」(18) →「名前のない手記」(17) →「名前のない手記」(16) →「名前のない手記…
かつては「文学青年」という言葉があり、実際にそう呼ばれる人がいたようだが、今はほとんどいないのではないかと思う。一方で、「宗教青年」「哲学青年」などの言葉があるようだ。ところで、この「〇〇青年」とは何なのか。 恐らくそれは、「〇〇」にアイデ…
先日、ある後輩ライターの仕事を見る機会があった。後輩がインタビューする様子を見、書き上がった原稿も読んだ。その原稿は、わりあい読みやすくまとめようと奮闘した跡が見られたが、全体としては駄目だった。最も良くなかったのが、ミスリーディングが多…
先日、インフルエンザによって寝込んでしまい、その間はブログ記事を書かなかったことについて、書かないのは感覚の鈍化を招いてしまう、と書いた。 たしかにそういう面はあると思うが、一方で、すっかり習慣化してしまっていた行為を休んでみることで、その…
2月17日、町田市民文学館ことばらんどで開催中の企画展「世界の果てで生き延びろ ―芥川賞作家・八木義德 展―」に行ってきた。 八木義德は1911年生まれ、現在の室蘭市の出身。学生運動や自殺未遂などを経験し、「劉廣福(リュウカンフウ)」で第19回芥川賞(1…
一月下旬、インフルエンザに感染してしまい、数日会社を休んで家で寝込んでいた。その間はほぼ一日中、蒲団の中にいて、ブログ記事を書くことができなかった。とはいえ更新そのものは一日も落とさず持続することができたのは、以前に書き溜めておいたストッ…
小学校の道徳の授業に「二わのことり」という話が出てくる。主人公の「みそさざい」はある日、「やまがら」のお誕生会に行こうか、「うぐいす」の音楽会に行こうか迷う。最初は賑やかで他にも複数集まっているうぐいすの会の方へ行くが、どうも面白くなく、…
連載22回目。 →「名前のない手記」(22) →「名前のない手記」(21) →「名前のない手記」(20) →「名前のない手記」(19) →「名前のない手記」(18) →「名前のない手記」(17) →「名前のない手記」(16) →「名前のない手記」(15) →「名前のない手記…
こないだ都立赤塚公園を歩いたら松の「雪吊り」というのを見かけた。 赤塚公園のホームページを見ると過去にもこれをやっていたことが分かり、恐らく毎年やっているのだろうと察しがつく。 これは元々、リンゴの重さから枝を守るために施すものらしく、明治…
私は常に「努力」と「忍耐」をはき違えないよう気をつけている。これを最もはき違えやすいのが仕事の場でのことで、長時間働いた、上司の命令に文句も言わず従った、というようなことを「頑張った=努力した」と表現するのである。 しかし、そういうのは私の…
堀越正光の『あの本の主人公と歩く 東京物語散歩100』(ぺりかん社、2018年)をぱらぱら読んだ。朝日新聞で連載していたコラムの書籍化で、100本をテーマごとに抜粋したもの。 以前、このコラムで森鷗外の短篇「鼠坂」を知り、実際の鼠坂を歩いたことがあっ…
先日、久しぶりに石塚友二「松風」を読んだ。この短篇は、ある本で、身辺雑記ものや冠婚葬祭ものでも良い小説はある、として紹介されていた作品で、それで興味が湧いて読んだのが最初だった。 私自身、いま身辺雑記小説めいたものを書いていて、地味な筋をど…
朝日新聞に昨年まで連載された堀越正光の「東京物語散歩」の108回(2009年3月17日)は津島佑子「黙市(だんまりいち)」である(らしい)。川端賞を受賞したその短篇に出てくるのが文京区の六義園と知り、面白そうだと思って読んだ。 話は、六義園に棲む動物…
地元の図書館に限らず、職場近くの図書館もよく利用している。地元と職場は東京の中でも違う区なので二つの区立図書館に利用者登録をしているのだが、それぞれ複数の図書館を擁しているため、合計すると十以上の図書館を利用できることになる。 だからたいて…
連載21回目。 →「名前のない手記」(21) →「名前のない手記」(20) →「名前のない手記」(19) →「名前のない手記」(18) →「名前のない手記」(17) →「名前のない手記」(16) →「名前のない手記」(15) →「名前のない手記」(14) →「名前のない手記…
ゲーテの『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』(山崎章甫訳、岩波文庫、2000年)、『ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代』(山崎章甫訳、岩波文庫、2002年)は、読んだがほとんど内容を覚えていない。ビルドゥングスロマンというのはどういう背景を持っ…
何で読んだか忘れたが、映画監督の黒澤明は助監督時代、激務に追われながらも本を読み、シナリオを書いていた。そんな実体験を踏まえ、監督を目指す助監督は一日一枚シナリオを書け、それを一年続ければ長編シナリオが確実に一本書き上がるから、と言ったと…
長年小説を書いているが、自分の小説構想、執筆における初歩的な欠点が分かった。ひとまず主題はあるのだが、それが発展していないことだ。 以前ある人から、私の小説は「ストーリーが貧寒」だという風に言われたことがある。それはいろんな意味を含んでいた…
矢作勝美の『伝記と自伝の方法』(出版ニュース社、1971年)によると、インタビュアーの全質問の30〜40%はインタビュイーが知らないことであり、インタビュイーの63%が知らないにも関わらず断定的に答えるらしい。矢作は堀川直義の『インタビューの研究――…
タウン誌の編集とライターをしていたので、地元のさまざまな動きにはけっこう興味がある。今はライターとして企業による不動産開発や建設現場を取材することもあり、タウン誌で外側から見聞きしていた街の動きが、現場ではどういう人たちがどういう風に動か…
幽霊とかお化けとかを私は信じていないが、「言霊」の力はこれまでの経験からちょっと信じている。 私が信じる言霊は「刷り込み」みたいなもので、例えば「私は馬鹿だ」ということを言い続けていると、はじめは謙遜のつもりか、ややこしいことに首を突っ込み…
連載20回目。 →「名前のない手記」(20) →「名前のない手記」(19) →「名前のない手記」(18) →「名前のない手記」(17) →「名前のない手記」(16) →「名前のない手記」(15) →「名前のない手記」(14) →「名前のない手記」(13) →「名前のない手記…