杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

情報生産者

図書館でたまたま見つけて手に取った、上野千鶴子『情報生産者になる』(ちくま新書、2018年)。その冒頭「はじめに 学問したいあなたへ」を読み、次の箇所に共感を覚えました。 情報の消費者には「通」から「野暮」までの幅があって、情報通で情報のクォリ…

エドガー・アラン・ポオ「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」

エドガー・アラン・ポオの長篇小説「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」(『ポオ小説全集2』(創元推理文庫、1974年)所収、大西尹明訳)を読みました。 この小説はポオ唯一の長篇で、ジュリアン・シモンズによるポオの伝記『告げ口心臓…

黄葉の赤塚公園

板橋区の都立赤塚公園が黄葉しています。 赤塚公園は、都営三田線「高島平」駅から徒歩五分ほどの場所にある公園で、シンボルである噴水とその周辺の公園を含む中央地区の他、首都高速5号線をくぐった先にある辻山地区、徳丸が丘緑地地区、番場地区、沖山地…

仕事と自己実現

最近、キャリアや仕事への意欲の保ち方などについて、人と話す機会がありました。その話し合いの中では「成長」というキーワードが頻出していたように記憶しています。 私としては、仕事を通して自分の「成長」を期するのは、悪いことではないが義務でもない…

佐伯一麦「虫が嗤う」

佐伯一麦の短篇「虫が嗤う」を読みました。これは「海燕」1985年6月号が初出で、単行本『雛の棲家』(福武書店、1987年)に収められました。 内容は、言わば「海燕」新人文学賞を受賞した「木を接ぐ」の続篇で、生まれたばかりの赤ん坊を育てる主人公夫婦の…

消耗戦

小手鞠るいの小説『いちばん近くて遠い』(PHP研究所、2014年)を読んでいたら、舞子という登場人物による、ライターに関する次のような台詞がありました。 「フリーライターというのはね、消耗戦を闘っている二軍の選手みたいなものなのよ。将来性がないの…

佐伯一麦「朝の一日」

佐伯一麦の短篇「朝の一日」を読みました。 これは「海燕」1986年12月号が初出で、単行本『雛の棲家』(福武書店、1987年)に収められ、今は『日和山』(講談社文芸文庫、2014年)で読むことができます。 内容は、主人公の鮮(あきら)が仙台の町で朝早くに…

本の縁

先日、バルザック『ウジェニー・グランデ』(水野亮訳、岩波文庫、1953年)をぱらぱらとめくっていたら、小説の末尾に鉛筆による書き込みがあるのを見つけました。本書を私はずっと前に読了しているので、その時にも目にしたはずですが気に留めなかったのだ…

八木義德「小説のおもしろさ」

文藝誌「海燕」1984年11月号を手に取る機会があり、冒頭の八木義德によるエッセイ「小説のおもしろさ」を読みました。 「海燕」は福武書店、現在のベネッセコーポレーションから出ていましたが(1982年1月号より)、1996年11月号をもって終刊しました。同社…

バルザック本

お題「我が家の本棚」 先日、はてなブログ10周年特別お題に参加して楽しかったので、これからもちょくちょく気が向いたらお題に参加してみようと思います。お題シャッフルをやっていたら「我が家の本棚」というのがあり、これなら答えやすいと感じたので書く…

佐伯一麦「いつもそばに本屋が」

朝日新聞2021年11月14日朝刊1面の鷲田清一「折々のことば」は、佐伯一麦の随想「いつもそばに本屋が」(前野久美子編『仙台本屋時間』(ビブランタン、2021年)所収)の一節を紹介しています。 子供というものは、大人が思うほど子供っぽくなく、孤独に耐え…

板橋農業まつり名物「野菜宝船」

先日、用事があって板橋区赤塚に行きました。板橋区立赤塚図書館と区役所赤塚支所の前を通ると、建物の手前に板橋農業まつりの名物「野菜宝船」が設置されていました。 前後の長さは2メートル以上あり、重さは約1.5トンもあるそうです。積んでいる野菜はキャ…

スヌーピーの言葉

NHK Eテレの「ねほりんぱほりん」、先日は「親が“神様”を名乗る人」でした。 親が、どんなことも霊に結び付けて考えて行動する人で、ごく普通の親の愛を与えられることのなかった女性が登場。その人生は悲しく厳しいものでしたが、当人は、今ではそういう運…

黒井千次「丸の内」

講談社文芸文庫『群像短篇名作選2000~2014』収録の黒井千次「丸の内」を読みました。 これは「群像」2003年1月号に掲載された作品で、2004年度の川端康成文学賞の候補になりました。ただし受賞はしておらず、その時は絲山秋子「袋小路の男」が受賞しました…

50000アクセス突破

このブログの合計アクセス数が50000を突破しました。30000から40000に到達するのに半年ほどかかりましたが、40000から50000もだいたいそれくらいの期間です。 SNS連携した記事は比較的アクセスが多いように感じます。ということは、SNS連携をもっと積極的に…

人間関係、お金との付き合い方。そして書くこと。

はてなブログ10周年特別お題「10年で変わったこと・変わらなかったこと」で記事を書きます。 変わったこと 1:人付き合いのし方。十年前というと、三十歳代の前半になります。当時は、今も勤めている会社で働き、プライベートでは文学同人に所属して同人誌…

好きな「最近読んだ本」10選

はてなブログ10周年特別お題「好きな◯◯10選」に答えます。 月並みですが、◯◯は「最近読んだ本」にします。「これまでに読んだ本」だとあまりに多くなり選べなくなってしまいますので、「最近」にしました。 1 エドガー・アラン・ポオ『ポオ小説全集2』 本…

私が「ねほりんぱほりん」にハマる10の理由

はてなブログ10周年特別お題「私が◯◯にハマる10の理由」に参加します。 ◯◯は、NHK Eテレの番組「ねほりんぱほりん」にしました。この番組は、顔出しNGのゲストをブタに、聞き手の山里亮太とYOUはモグラに扮することで、普通ではちょっと聞けなそうなことを根…

「はてなブロガーに10の質問」に答えます。

はてなブログが10周年ということで、めでたいですね。特別お題キャンペーンが行われているので、面白いので参加します。 はてなブログ10周年特別お題「はてなブロガーに10の質問」に答えます。 ブログ名もしくはハンドルネームの由来は? ブログを開始したの…

平安時代の人の一生

ある人のブログに面白いことが書いてあった。現代人が一日に浴びる情報量は、平安時代の人の一生分だと言われている、とのことである。面白かったので、いろいろ考えた。 「言われている」とあるし、情報の出どころは分からないが、この「情報」とは何だろう…

たった一人の時間

佐伯一麦はかつて、小説家ワナビに向けた「作家をめざす君に」という随筆を書いた。そこで佐伯は、文学をやるということは世界と対峙するということで、太古から続く生命の流れに耳を澄ますことでもある、といったことを述べた。 学校を終えて社会人になって…

「ぬか床の底」

「オール讀物」11月号に、作家・桜木紫乃のインタビュー「新人賞から本当のサバイバルが始まる」が載っている。桜木は2002年に「雪虫」でオール讀物新人賞を受賞したが、初の単行本『氷平線』が出るまで5年半という月日がかかった。受賞後、毎週のように30枚…

知の巨人

だいぶ前にこのブログで、「最後の文士」という言葉が色んな作家に対して使われている、と書いた。「最後の○○」という言葉はとても便利な持ち上げの言葉だと思う。 それと似たような言葉として、「知の巨人」という言葉も挙げられるだろう。日本人は「知の巨…

板橋区立熱帯環境植物館「アマゾン展リターンズ!」

板橋区立熱帯環境植物館で10月19日から開催中の「アマゾン展リターンズ!」を見た。 6月に開催した同じテーマの展覧会が好評だったとのことで、その第二弾である。世界最大の河であり、生き物の宝庫でもあるアマゾン川。その流域に生息する生き物を紹介してい…

行動力

朝日新聞11月5日朝刊に、第18回ショパン国際ピアノコンクールの記事が載っていた。 オンラインが日常化したコロナ禍の世の中でコンクールはエンタメとして提供され、権威を基礎にしてきた旧来の音楽ビジネスの在り方にも一石を投じた、とのこと。 実際にショ…

自分を亡くす

ここのところ、めちゃくちゃ忙しい。十一月なのに師走の忙しなさを感じさせるほどである。 忙しい時期は昔からほぼ定期的にあるが、近年は物事を俯瞰的に見つめる視点が養われたのか、仕事の全体像が見えていて、以前のように暗闇の中を這い回っているような…

縁なき衆生は度し難し

他人と議論をしていて、自分にとっては簡単な問題だと思うことが、相手にとってはやたら難しい問題になっていることが、たまにある。 そこで、これこれこういう風に考え、こう行動すればその問題は難なく解決できるでしょう、といった提案をする。それに対し…

指のない親方

佐伯一麦「転居記」は佐伯の私小説だが、それがその実人生に酷似していることは佐伯の随筆や『石の肺』(岩波現代文庫、2020年)を読んでも分かる。『石の肺』は佐伯自身のアスベスト禍の体験を書いた本で、岩波文庫は2020年刊だが2007年に新潮社から刊行さ…

佐伯一麦「転居記」

佐伯一麦の短篇「転居記」を読んだ。これは「海燕」1986年3月号の掲載されたもので、私は『雛の棲家』(福武書店、1987年)で読んだ。 内容はタイトルの通り、主人公家族の引っ越しの経緯を描いたものだ。それだけだとひどく地味なようだが、実際かなり地味…

名古屋の喫茶店「コンパル」

このブログではグルメ記事を書いたことがないはずだが、先日愛知県に行った時に入った喫茶店「コンパル」のコーヒーが美味しかったので、書いておきたい。 喫茶店「コンパル」は、名古屋の栄の「栄森の地下街」というエリアに二つある。地下街の南一番街にあ…