杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

2023-01-01から1年間の記事一覧

乱読は考えもの…

最近読んだ本から 近頃は少しばかり心身ともに落ち着ける期間があり、シニアライフのようなゆったりとした生活を送っています。 一方で、本への興味はちっとも落ち着きを見せず、あれこれと手当たり次第に手に取り、ページをめくることが続いています。「最…

「文学フリマ東京36」に行ってきた。

文フリ史上最多の出店数 本日、東京流通センター第一展示場・第二展示場で開催された「文学フリマ東京36」に行ってきました。 2021年の「第三十二回文学フリマ東京」(5月16日)に出店者として参加して以来、二年ぶりの流通センターでした。 一昨年はたしか…

「はてなブログの文学フリマ本」に掲載が決まりました。

先日投稿した特別お題「今だから話せること」の記事が、はてなブログの企画「はてなブログの文学フリマ本」に掲載されることになりました。 本企画は、特別お題について書かれたブロガーの記事を一冊にまとめ、5月21日開催の「文学フリマ東京36」で配布する…

じゃこうねずみとスナフキン

「ムーミン」シリーズを読んでみたい 私は「ムーミン」シリーズを読んだことがありませんが、これから少しずつ読んでいこうかな、と考えています。 きっかけは、敬している作家が、「ムーミン」に出てくる「無駄じゃ無駄じゃ」が口癖の哲学者をイメージさせ…

環境の力

最近読んだ本から こんばんは。お久しぶりです。 最近は公私ともに、いや私的にけっこう忙しくて、ブログ執筆が滞っていました。 気がつくと未更新が一か月も続いてしまい、さすがに何か書いて更新したくなりました。そこで、最近読んだ本をネタに書こうと思…

「老成した心」

佐伯の性向の特徴 毎日新聞2021年4月10日(土)朝刊の書評欄「今週の本棚」の一コーナー「なつかしい一冊」は、佐伯一麦によるギッシング『ヘンリ・ライクロフトの私記』(平井正穂訳、岩波文庫、1961年)の紹介が掲載されています。 平井正穂といえば、私は…

脚本を書く映画監督になりたかった。

特別お題「今だから話せること」に参加します。 ここでいう「今だから話せる」は、「過去には話せなかった(明かせなかった)」ではありません。時が経ち、人間的にあるていど成熟したので、山の上の方へ行けば登ってきた山道を眺められるように、当時を振り…

お知らせ

毎日更新から不定期更新へ このブログは2018年3月11日に開始し、1日1記事の毎日更新を徹底してきました。それをこのたび終了し、不定期更新していくことにしました。これまでは、とにかく毎日更新することを継続するため、漠然と考えていることなどでもエッ…

西村賢太「菰を被りて夏を待つ」

文章力の高さ 西村賢太の短篇「菰を被りて夏を待つ」(『無銭横町』(文春文庫、2017年)所収)を読みました。 横浜から要町に引っ越してきた北町貫太が、田中英光の古書に入れ込み、金を注ぎ込んでしまうので家賃も払えず、古書の代金さえも払えなくなる過…

ネットつぶやきの怖さ

誰もがやる可能性がある 佐藤真通原作、富士屋カツヒト作画の漫画『しょせん他人事ですから』2巻(白泉社、2022年)を読みました。 前に読んだ1巻が面白かったので、2巻も購入。とうぜん次は3巻を読みますが、1巻が一冊で完結していたのに対し2巻が途中で終…

クリエイターの人生

最近、いわゆるクリエイターの人生について考える機会がありました。 プロダクション勤務のクリエイターともなると、クライアントの要求を形にするために日々働くものの、経験値は蓄積されますが資産が積み上るわけではありません。花形になって出世できれば…

西村賢太の「敷居が高い」

ある意味で衒学的 西村賢太の短篇「菰を被りて夏を待つ」(『無銭横町』(文春文庫、2017年)所収)は、北町貫多を主人公とした私小説です。文章は主語が「私」でなく「貫多」と三人称で、貫多が横浜から要町の安アパートに引っ越してきたニ十歳頃のことを描…

適応障害の当事者と家族

広く読まれるべき本 精神科医の浅井逸郎監修『心のお医者さんに聞いてみよう わが子、夫、妻…。大切な家族が「適応障害」と診断されたとき読む本』(大和出版、2022年)を読んでいます。 かつて、「適応障害」だと診断され一か月ほど仕事を休んだ人が知人に…

聖書の物語世界

ストーリーとビジュアル サリー・タグホルム、アンドレア・ミルズ『ビジュアル版 はじめての聖書物語』(山崎正浩訳、創元社、2022年)を読んでいます。 世界で最も広く読まれているといわれる「聖書」ですが、私の大学時代の先生は以前、最もよくできた小説…

「人間喜劇」の登場人物

典型的人物たち エンツォ・オルランディ編、山本有幸訳『カラー版 世界の文豪叢書 バルザック』(評論社、1976年)は、いわばバルザックと小説作品のガイドブックのような一冊です。図書館で見つけ、借りてきました。 読んだのは「『人間喜劇』の登場人物」…

宇佐見りん『かか』

理解できない思いと行動 宇佐見りん『かか』(河出書房新社、2019年)を読みました。 良かったです。「かか(母)」への深い愛憎を胸に、19歳の浪人生うーちゃんは、ほとんど崩壊している家族を離れ、孤独で苦しい熊野行きを敢行する。うーちゃんの思いと行…

セロトニンと腸

腸活は大事 赤羽根拓弥監修『カラダのすべてを肛門は知っている』(カンゼン、2023年)のことは先日もこのブログで取り上げましたが、この本、面白いです。日常生活では知人とも家族間でもあまり話題にされることがないであろう肛門について、一つの話題につ…

職業を描く

私はバルザックの小説をよく読みます。ライフワークのように、「人間喜劇」の作品を一つずつ読んでいるのです。バルザックの小説世界の面白さとは何だろうか、と考えてみたら、その一つは多分、フランス19世紀の社会に存在していた「職業」を描き出している…

「かか」と「うーちゃん」

宇佐見りん『かか』(河出書房新社、2019年)は、「うーちゃん」という主人公であり語り手でもある女性が、母親である「かか」への複雑な愛情を吐露する一人称小説です。 父である「とと」が浮気し、発狂してしまった「かか」を「うーちゃん」は深く愛してお…

青木まりこ現象

発端は「本の雑誌」への投稿 図書館で見かけて手に取った、赤羽根拓弥監修『カラダのすべてを肛門は知っている』(カンゼン、2023年)。健康にはそれなりに気を使っているので、その一環で読んでみようと思ったのです。 興味のあるところだけ拾い読みしまし…

坂口博信と植松伸夫

良い「体育会系」 自宅の所蔵品整理をしていて、かつて買った「FINAL FANTASY Ⅵ」のサウンドトラックを捨てました。これは3枚組のCDですが、すでにCDプレイヤーは我が家にありませんし、3枚のうちの1枚を紛失していたためもう売ることもできず、単に捨てるこ…

ゲーム遍歴3 ゲームボーイ2

一日30分まで ゲームボーイを手に入れた経緯は前回書いた通りです。私の親は、ゲーム機を買うことを許してくれたとはいえ、依然として保守的で厳しかったこともあり(この「厳しい」という表現は、実はあまり適切とはいえない面もあります。ある意味では極め…

板橋区立郷土資料館 古民家年中行事 ヒナマツリ

いつものことながら、華やか 2月18日から板橋区立郷土資料館の古民家で年中行事「ヒナマツリ」を開催しています。4月2日まで。 このイベントのことは毎年のように当ブログで記事にしているので、背景などは詳しく書かないことにします。毎度のことながら、華…

ゲーム遍歴2 ゲームボーイ1

念願のゲーム機 「わが闘争」ならぬ「わが遊興」ということで、人生におけるゲームとの関わりを振り返る不定期連載「ゲーム遍歴」。第2回は任天堂の携帯ゲーム機ゲームボーイにまつわる思い出を書きます。 これが発売されたのは、Wikipediaを参照すると1989…

着眼大局着手小局

高い目標でなくとも… 以前ある経営者にインタビューをした際、その経営者が会社経営で重視している言葉として聞きました。 事を成そうとするなら、目標を高く持ち、それを達成するための小さな行動を日々着実に実行することが大切、という意味です。いい言葉…

大河内昭爾のすれ違い

滋味あるエッセイ集『落葉の坂道』 一昨日、このブログで記事にした日本文藝家協会編『ベスト・エッセイ2002 落葉の坂道』(光村図書、2002年)。佐伯一麦の「川の土手の光景」は味わいがありましたが、他にも拾い読みをしてみるかと思い、三浦哲郎「落葉の…

ドーパミンと稼ぐ力

人間、ドーパミンとはうまく付き合っていかなくてはならないと思います。お酒やギャンブル、恋愛など、ドーパミンが出る行為に対し中毒になりやすい人は、それによって心身の健康や人間関係を壊さないよう深く注意するべきでしょう。 しかし、ドーパミンが出…

志賀直哉と佐伯一麦

私小説の議論 日本文藝家協会編『ベスト・エッセイ2002 落葉の坂道』(光村図書、2002年)は、作家77人の短いエッセイを集めたもので(77篇)、表題作は三浦哲郎のもの。解説はありませんが、普通に考えて、2002年に発表されたエッセイから選りすぐった77作…

自分の頭で考える。

かつては年長者といると落ち着いた 阿部浩一『きまじめでやさしい弱者のための「独立・起業」読本』(インプレス、2021年)を読みました。 「独立」「起業」というキーワードに興味があったため手に取った本でしたが、起業ノウハウについてはあまり触れられ…

我執

自己絶対視 「当店こだわりの味」などの表現はよく見かけますが、この「こだわり」という言葉の本来の意味には、肯定的なニュアンスは無いのだそうです。最近知りました。 細かいところにまで気を使う、という意味は、手元の辞書(学研)によると新しい言い…