杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

2018-12-01から1ヶ月間の記事一覧

大晦

ブログを開設して初めての大晦(おおつごもり)である。 ツイッターは昨年始めたが、今年は3月11日にこのブログを始め、FacebookとInstagramも始めた。またホームページの作成も開始したが、こちらは来年には人に見せられるようにしたい。 読書と調べ物と書…

『渡良瀬』に出てくる「小説家」

佐伯一麦の『渡良瀬』(新潮文庫、2017年)には、主人公・南條拓が古河市の「宗願寺(そうがんじ)」に小説家の墓を訪ねるシーンがあり、面白い。 その小説家の墓の墓石には「寂」という字が彫られていて、それは作家が生前に書いたものだとあり、さらに作家…

水と醴

美輪明宏さんが池上彰との対談で「君子之交淡如水」という『荘子』の言葉を引き、人間関係は腹六分がちょうどいい、と言っていた。君子とは高い教養と徳を備えた人のことで、そういう人は人間関係が水のように淡白、だから大きな争いごとに発展することなく…

小説「名前のない手記」(15)

連載15回目。 →「名前のない手記」(15) →「名前のない手記」(14) →「名前のない手記」(13) →「名前のない手記」(12) →「名前のない手記」(11) →「名前のない手記」(10) →「名前のない手記」(9) →「名前のない手記」(8) →「名前のない手記」…

佐伯一麦「海からの信号」

新潮社編『空を飛ぶ恋 ケータイがつなぐ28の物語』(新潮文庫、2006年)は、「週刊新潮」2003円11月20日号から2006年3月16日号まで掲載された「Communicate Cafe ショートショート」を編集したもの。同シリーズはKDDIが提供したもので、文庫版にはタイトルの…

バルザック『ウジェニー・グランデ』

バルザック『ウジェニー・グランデ』(水野亮訳、岩波文庫、1953年)を読んだ。水野の解説によると、本作は1833年の6月か7月に書き始められたそうで、だとするとバルザック34歳頃のことになる。 長篇だが話は割と単純で、フランスの田舎町ソーミュールに住む…

「なぜ書くか」?

小説を書いている人に対し、その作品をなぜ書くか、ということを自分に問え、という人がいる。 小説講座の講師などにそういう人がいるのだが、どうも私はそういう問いを自分にするのが苦手で、どうして書くかって、書きたいから書くのに決まっているし、では…

歴史生齧り

夜、ちょっとした時間ができたときは山川出版社の『詳説世界史図録』をぱらぱらめくって読んでいる。書き物をするほど時間が余っているわけではなく、かといってまだ眠るには早い、といった空き時間にやるので、計画的でなく定期的でもない。 読み方もいい加…

佐伯一麦と無花果

佐伯一麦は2018年の秋に渡英した。フェルト作家であるリズという友人と、佐伯の妻との「二人展」がイギリスのウェルズという場所で行われ、佐伯夫妻はリズとその夫の家に滞在したのである。 そのことは、佐伯自身が朝日新聞の土曜版「be」の「作家の口福」に…

資料の整理

先日、家族が用事で出掛けて家で一人になったので、集めるだけ集めて整理していなかった、ある作家に関する資料を整理した。 その作家は活動期間が三十年以上にわたり、発表媒体も多岐にわたっているし、またその作家への評価も至るところで行われているので…

小説「名前のない手記」(14)

連載14回目。 →「名前のない手記」(14) →「名前のない手記」(13) →「名前のない手記」(12) →「名前のない手記」(11) →「名前のない手記」(10) →「名前のない手記」(9) →「名前のない手記」(8) →「名前のない手記」(7) →「名前のない手記」(…

まず行動

はあちゅう『半径5メートルの野望 完全版』(講談社文庫、2016年)を読んだ。これは2015年に講談社より刊行されたものを改題、加筆修正したもので、「新たに一章追加」したと、文庫版のあとがきに書いてある。 様々なことが書かれているが、その主眼は「半…

私小説雑感

梅澤亜由美の『私小説の技法』(勉誠出版、2017年)を図書館で借り、ぱらぱら読んだのだが、「はじめに」で首を傾げる箇所があった。 ここを読むと、梅澤は私小説を、その特徴を述べて称揚しようとしているように思える。まず「私小説は、誰にでも書きやすい…

ライターの蹉跌

これまでのライター経験の中で、周囲の先輩・後輩がライターを辞める、といったことが少なからずあった。 単に勤めていた会社を辞めて別の会社のライターになった、というのではなく、ライター仕事そのものと縁を切ってしまうのである。その理由は、業務量が…

街を見るのが好き。2

ずいぶん前にこのブログで「街を見るのが好き。」という記事を投稿した。 もちろん今も相変わらず街のいろんな箇所を見るのが好きで、面白いものを見つけてはスマホでパシャパシャやっている。 写真を撮る、という意識を持つと、何気ない風景がぜんぶ被写体…

牛のように

このブログではエッセイを多く載せているが、最も載せたいのは創作へのリンクと文学研究、地域研究、つまり「書き物」である。しかしこれらは思いついたら即座に書いてアップできるブログ記事やつぶやきとは違い、調査したり構成を考えたりしてから書くので…

沈黙は金雄弁は銀

この言葉は、沈黙が最上の分別だという意味である。近ごろ、そのことをよく実感する。つまり、「見ざる聞かざる言わざる」じゃないが、とにかく余計なことはしないに限ると思うことが多い。 二十代や三十代の頃はそうではなかった。どんなことも見たい、聞き…

小説「名前のない手記」(13)

連載13回目。 →「名前のない手記」(13) →「名前のない手記」(12) →「名前のない手記」(11) →「名前のない手記」(10) →「名前のない手記」(9) →「名前のない手記」(8) →「名前のない手記」(7) →「名前のない手記」(6) →「名前のない手記」(5…

潜ってばかりではいけない。

ライターの仕事は、集中できる時間と環境がとてつもなく大切だと思う。しかし顧客や同僚からのメール、電話などの連絡、職場への訪問者、あるいは同じ室内にいる同僚から話し掛けられたりと、何かとその集中は遮断される。これは意外に辛い。そしてこれは、…

調べれば調べるほど楽しみになる。

先日は実に面白い取材をした。 ある海外事業プロジェクトの取材である。それを推進した担当者の思い出話、苦労話をたくさん聞けて、実にためになった。 私はこの取材をするにあたり、プロジェクトの年表を作って時系列的な流れを予め頭に入れておいた。これ…

「ドラえもん」は好き

昨日、「北斗の拳」について、あれは大人の観賞に堪えるものではなく、例えば子供などに読むといいと勧めることはできない、という記事を書いた。 それはアニメの「アンパンマン」についても言えることで、あれは子供に人気だが、かなり単純な勧善懲悪ストー…

「北斗の拳」の思い出

先日、録画しておいたBSプレミアムのアナザーストーリーズ「“北斗の拳”誕生 ~舞台裏のもう一つの“格闘”~」を見た。 私は少年期に「北斗の拳」に夢中になった一人であり、単行本は全巻持っていた。アニメも夢中になって見ていたし、友人間で私より作品に詳…

新聞創刊の地

こないだ虎ノ門を歩いていたら「新聞創刊の地」という記念碑があり、面白いなあと思って写真を撮った。 洋学者の子安峻(こやす・たかし)という人が旧武家長屋で「読売新聞」を創刊し、それが日本初の大衆啓発紙なのだそうだ。碑のある場所は恐らくその旧武…

光陰矢の如し

師走になったが、それ以前からやたら忙しい。時間が過ぎるのが速い。光陰矢の如し。 夏から秋にかけて、毎日、睡眠時間を削って色んなことに取り組み、ついに秋から冬になる時期に体調を崩してしまった。それからはややセーブしているが、そうなるとこんどは…

小説「名前のない手記」(12)

連載12回目。 →「名前のない手記」(12) →「名前のない手記」(11) →「名前のない手記」(10) →「名前のない手記」(9) →「名前のない手記」(8) →「名前のない手記」(7) →「名前のない手記」(6) →「名前のない手記」(5) →「名前のない手記」(4…

「NHKサイエンススタジアム2018」に行ってきた。

先日、日本科学未来館で行われた「NHKサイエンススタジアム2018」に行ってきた。 科学番組の内容を体験できる展示が多数あり、「なりきり!」「大科学実験」「人類誕生」などなど、どれも面白かった。「バビブベボディ」と「カガクのタネ」のコラボで、臓器…

ウェブ小説と小説の将来

先日足を運んだ「文学フリマ」で、「小説家になろう」ブースに置いてあった田島隆雄『読者の心をつかむ WEB小説ヒットの方程式』(幻冬社、2016年)に興味が湧き、さっそく読んでいる。 作家へのインタビューが中心だが、第一章「押さえておきたい「出版」の…

相手の負担を軽くする

こないだ久しぶりに照屋華子『ロジカル・ライティング』(東洋経済新報社、2006年)を手に取り、ぱらぱら読んだ。その帯には「あなたは読み手に「解読」を迫っていませんか?」という言葉がある。文章は、できるだけ読みやすく、分かりやすく書くことが大事…

グリーンピース方式

子供にグリーンピースを食べなさいと言っても子供は食べない。だから賢い母親は、ハンバーグの中にグリーンピースをつぶして練り込む。 以前、ある会社の企画会議に参加した時、プランニングを担当するクリエイティブ・ディレクターの人がそんなことを言って…

変わりゆく街

先日、用事があって久しぶりに小田急線の登戸駅に降りた。 駅西側の商店街を歩いたのだが、街並みを眺めて啞然とした。私が川崎市麻生区に住んでいた頃からの変貌ぶりがあまりに激しかったからだ。 「登戸駅前商店街」は、文字通り登戸駅周辺に広がる商店街…