杉本純のブログ

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「北斗の拳」の思い出

先日、録画しておいたBSプレミアムのアナザーストーリーズ「“北斗の拳”誕生 ~舞台裏のもう一つの“格闘”~」を見た。

私は少年期に「北斗の拳」に夢中になった一人であり、単行本は全巻持っていた。アニメも夢中になって見ていたし、友人間で私より作品に詳しい人はいなかったと思うほどだ。

さて、番組は面白かった。漫画づくりの過程のエピソードは私も知らないものがいくつもあり、楽しんで見ることができた。

それと同時に、私が以前、知人との間に起こしたちょっとした諍いを思い出した。

それは、自分がかつて夢中になった「北斗の拳」を、今、下の世代の人に読めと勧められるかどうか、という問題を巡る意見の対立である。知人は勧められる、私は勧められない、という立場で諍いになり、しかし私の方に知人を論破する意思がなかったので激論には発展せずに終わった。

私はことさら、少年漫画が大人の観賞に堪えうる代物だとは思っていないし、「北斗の拳」とて同様、深遠そうな言葉を使っているが要するにユリアという絶世の美女を巡っての兄弟喧嘩に過ぎず、さほど真剣に読むものではないと思っている。少年漫画は、単なる娯楽として楽しんでいればいいのである。また「北斗の拳」の場合、私自身、楽しく夢中になって読んだが、今はもう読むことはないし、やはりあれだけの暴力描写をしている漫画を、例えば自分の子に読みなさいなどとはとても言えないのである。

知人の言い分はおおよそ私の逆で、「北斗の拳」は大人の観賞に堪えうるものであり、だからこそ下の世代にも勧められるのだ、というものだったと記憶している。私は、百歩譲って、大人の観賞に堪えうるものだとしても、やはり暴力描写の方に抵抗があるので、自分が読むことはあるとしても「推薦」はできない、という考えだけ表明しておいた(はず)。

アナザーストーリーズは面白かった。原哲夫武論尊、編集者、またアニメの声優陣までも並々ならぬ熱量で制作に当たっていたことを認めるし、作品によって人生が好転した人がいることも認める。けれども、下の世代の人や子には勧められないという私の考えは変わらなかった。私と近い考えの人は、きっと少なくないはずだと思っている。

一方で、このように賛否が分かれる「北斗の拳」は、やはり「名作」とは呼べるのかも知れないと思った。