エッセイ
『十三人組物語』第三話 バルザックの中篇小説「金色の眼の娘」(西川祐子訳『「人間喜劇」総序・金色の眼の娘』(岩波文庫、2024年)所収)を読みました。 本作は、「人間喜劇」の「パリ生活情景」の一つ、全三話から成る『十三人組物語』の第三話です。初…
先日、年末の空いた時間を使って映画『マネーボール』を観ました。2011年のアメリカ映画。ブラッド・ピット主演、ベネット・ミラー監督。 ブラッド・ピット扮する、アメリカのプロ野球チーム、オークランド・アスレチックスのゼネラルマネージャーが、球団立…
バルザック「「人間喜劇」総序」(西川祐子訳『「人間喜劇」総序・金色の眼の娘』(岩波文庫、2024年)所収)を読みました。 この「総序」は、約90作品から成るバルザックの小説群「人間喜劇」の構想を、バルザック自らが述べたもの。構想は、人間界と動物界…
町田市民文学館ことばらんどで企画展「没後1周年森村誠一展 「小説(ミステリ)」を生きた男の肖像」を見ました。ことばらんどを訪ねたのは、2019年2月の「世界の果てで生き延びろ ―芥川賞作家・八木義德 展―」以来、約6年ぶり二度目のことでした。 企画展は…
最近はブログ更新が滞っていましたが、やはり、書くことって大事だなと思います。 一つ前の記事では、長年にわたり関わりがあった恩師と絶縁状態になったことについて書きましたが、書くことで自分と恩師の関係がどういうものだったかを客観視することができ…
過去にずいぶんお世話になった恩師と絶縁状態になりました。 師弟関係というのは難しいもので、普通の友人・知人の関係とは異なり、場合によっては愛憎の念が激しくなってしまう気がします。 落語家の立川談四楼は、落語界の師弟の濃厚な関係を精神的なホモ…
ブレイク・スナイダー『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』(菊池淳子訳、フィルムアート社、2010年)を読みました。 本書の初版は2010年10月ですが、私が購入したのは2024年8月発行の第18刷です。年1回以上の増刷をしていることになるので、ロングセ…
ちょっと更新が滞っていましたので、近況報告的に最近読んだ本を書きます。精読でなく卒読、部分的に読んだものを含みます。 脈絡なく読んでいるように見えると思いますが、私なりのある方針に沿って読書を進めています。 小説推理 2024年8月号 作者:小説推…
かつて惹かれた 編集者の松岡正剛が死にました。80歳。 私は学生時代と社会人になってしばらくのあいだ、松岡に惹かれていたことがあります。ここ十数年はその熱も冷め、かなり遠ざかっていましたが、やはり若い頃に長く熱中していただけに、訃報に接したと…
世の中にはこういう人もいる みか、わかぴょん原作、ハラユキ漫画『夫公認彼氏ができました セックスレスにとことん向き合った夫婦の13年レポ』(KADOKAWA、2022年)を読みました。 夫公認彼氏ができました セックスレスにとことん向き合った夫婦の13年レポ …
板橋区立郷土資料館に行き、紅梅小学校創立150周年記念展「そのかぐわしき名をあげよ~徳丸村の学び舎から~」を見ました。1874年に開校した板橋区最古の小学校の一つである紅梅小学校の沿革を軸に、関係者らが児童の教育に傾けた情熱を伝える展示です。 紅…
第15回女流文学賞受賞作 萩原葉子『蕁麻の家』(講談社文芸文庫、1997年)を読みました。本作は萩原の自伝的長篇小説で、『閉ざされた庭』『輪廻の暦』を含む三部作の第一作です。「新潮」1976年7月号に一挙掲載され、萩原は本作で第15回女流文学賞(1976年…
萩原葉子の『蕁麻の家』(講談社文芸文庫、1997年)を読んでいます。これは萩原の自伝的長篇小説で、『閉ざされた庭』『輪廻の暦』を含む三部作の第一作です。 『蕁麻の家』は私小説で、萩原自身の小学校から21歳までの経験を描いたもの。講談社文芸文庫の「…
現実と真実 GWは映画を一本観ようと思い、『トゥルーマン・ショー』を観ました。 1998年のアメリカ映画。監督のピーター・ウィアーは、『刑事ジョン・ブック 目撃者』(1985年)や『いまを生きる』(1989年)などの監督もしています。 主演はジム・キャリー…
設定が面白い ホリー・ジャクソン『自由研究には向かない殺人』(服部京子訳、創元推理文庫、2021年)を読みました。 自由研究には向かない殺人 〈自由研究には向かない殺人〉シリーズ (創元推理文庫) 作者:ホリー・ジャクソン 東京創元社 Amazon 高校生の主…
岡元大『まちかどガードパイプ図鑑』(創元社、2023年)を読みました。 まちかどガードパイプ図鑑 作者:岡元 大 創元社 Amazon 内容は、タイトルのとおり全国の街角のガードパイプを写真付きで紹介しまくるというものです。紹介されているガードパイプは、「…
板橋区立美術館に行き、「『シュルレアリスム宣言』100年 シュルレアリスムと日本」を見ました。 私はシュルレアリスム作品の良い鑑賞者ではない 『シュルレアリスム宣言』とは、フランスの作家アンドレ・ブルトンが1924年に発表した著作です。私は以前、フ…
漫画家の鳥山明先生が亡くなりました。68歳。この時代に68歳は早すぎるように思いますが、やはり、人生いつ何が起こるかわかりませんね。 鳥山先生の影響 さて、鳥山先生といえば、「Dr.スランプ」「DRAGON BALL」の作者であり、「ドラゴンクエスト」「クロ…
バルザックの長篇小説『あら皮』(小倉孝誠訳、藤原書店、2000年)を読みました。 私はバルザック作品を不定期で一作ずつ読んでいます。バルザックの代表作である本作のことは、何年も前に霧生和夫『バルザック』(中公新書、1978年)で知って以来、ずっと読…
「富士講」に関する資料を多数展示 板橋区立郷土資料館に行き、特別展「いたばしの富士山信仰―富士講用具と旅した人びと―」を見ました。 富士山信仰とは、言葉の通り、富士山を信仰の対象とし、崇拝し、参詣することなどを指します。山岳信仰の一種で、江戸…
命の饗宴 板橋区立熱帯環境植物館(グリーンドームねったいかん)に行き、開催中の企画展「熱帯雨林ボルネオ生命の森 -阿部雄介写真展-」を見ました。 阿部雄介さんは、ライフワークで熱帯林や野生動物を撮影しているフォトグラファーです。阿部さんの写真は…
私小説家=正直な人? 日本文藝家協会編『新茶とアカシア』(光村図書出版、2001年)を、拾い読みしました。 本書はおかしなタイトルですが、2001年に発表されたエッセイの中から優れたものを日本文藝家協会が選りすぐったもの。著者は、阿川弘之、金重明、…
母が絶賛した映画 1995年のアメリカ映画『ユージュアル・サスペクツ』を観ました。 監督はブライアン・シンガー、脚本はクリストファー・マッカリーです。いずれも、知りません。 出演はガブリエル・バーン、スティーヴン・ボールドウィン、ベニチオ・デル・…
著者は同年 三人称 鉄塔(賽助)の『手持ちのカードで(なんとか)生きてます。』(河出書房新社、2023年)を読みました。 本書は言わばエッセイですが、通常のエッセイとは違います。河出書房新社の「14歳の世渡り術」シリーズの一冊で、いうなれば中学生の…
100冊超の積読本を手放した 買ってから長らく「積ん読」になっていたが、このたび部分的に読んだ。どうして読んだかというと、買った時から目次の中に気になっていた箇所があり、今回、その箇所に関連することを考える機会があったからだ。そのことは、目次…
実話を基にした映画 映画『ロスト・キング -500年越しの運命-』を観ました。 2022年のイギリス映画。日本では今年9月22日に公開されました。 映画館で新作を観たのは久しぶりで、しかも家族に付き合う形でない観賞となると、もう何年ぶりのことだか…。『星の…
『風の谷のナウシカ』と私 宮崎駿の漫画『風の谷のナウシカ』を読みました。 アニメージュコミックスのワイド判(徳間書店、1995年)で、全7冊。手元の第7巻の奥付を見ると、2023年7月15日116刷となっているので、今も売れ続けているロングセラーであること…
印刷産業にスポットを当てた企画 板橋区立郷土資料館に行き、企画展「令和5年度 工都展 印刷産業「残す」と「伝える」」を見ました。 本展示は、板橋区が2014年(平成26年)から開始した史跡公園整備事業と調査研究の成果を公開する展覧会「工都展」シリーズ…
メタ認知の働き わたなべぽん先生のコミックエッセイを二冊続けて読みました。『ダメな自分を認めたら部屋がキレイになりました』(メディアファクトリー、2015年)と『自分を好きになりたい。』(幻冬舎、2018年)です。二冊とも、わたなべ先生が実体験を元…
最近読んだ本から 近頃は少しばかり心身ともに落ち着ける期間があり、シニアライフのようなゆったりとした生活を送っています。 一方で、本への興味はちっとも落ち着きを見せず、あれこれと手当たり次第に手に取り、ページをめくることが続いています。「最…