齋藤なずな『ぼっち死の館』(小学館、2023年)を読みました。
作者の齋藤なずな先生のことは『別冊ESSE 団地で見つけた身軽で豊かな暮らし方』(扶桑社、2023年)のことで知り、本作のこともこの本で知りました。団地における独居老人の死(ぼっち死)に興味があったので手に取ったのですが、団地内で人たちがいなくなっていくストーリーが切なくて、胸を打ちます。
中でも、「牛の行く」という、妻を亡くした高齢者ライターが出版社に原稿を売り込みに行くエピソードが、いろいろと考えさせられました。というのは、ライターの知り合いが何人もいて、私自身がライター経験者であるので、知り合いや自分の将来の姿を見るような気がしたからです。
あと、各エピソードのはしばしにカラスが登場し、団地住人のやりとりを俯瞰している様子が描かれていますが、私はなぜかこの箇所に深く共感を覚えました。
団地に限らないと思いますが、人間がゴミを出す場所には多くのカラスがいて、カラスたちは人間の動きをよく観察しています。ぼっち死をする人を含め、団地の人間たちの営みをもっともよく知っているのは、カラスなのではないかと思うほどです。