杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

堀越正光『東京物語散歩』

堀越正光の『あの本の主人公と歩く 東京物語散歩100』(ぺりかん社、2018年)をぱらぱら読んだ。朝日新聞で連載していたコラムの書籍化で、100本をテーマごとに抜粋したもの。

以前、このコラムで森鷗外の短篇「鼠坂」を知り、実際の鼠坂を歩いたことがあった。小説は、よほど現実を逸脱したSFなどでない限り、地上に存在する場所を舞台にして展開することが多いと思う。その土地の雰囲気を描いた作品を読んだ上で該当場所を散歩すると、街の様子を眺めるのもまた愉しくなるだろう。私は、もしフランスに旅行したら、バルザックが描いたソーミュールとかトゥールなどを見て回りたいと思っている。また東京なら、水上勉フライパンの歌』や青山七恵『ひとり日和』など、舞台となった街の空気をよく伝える私小説として印象に残っていて、機会があれば小説の描写と実際の光景を照らし合わせて歩いてみたい。

さて、本書とコラムをきっかけとして、泉鏡花「外科室」を読み返したし、津島佑子「黙市」を読んだりした。いずれも文京区が描かれていて、職場が近いので親近感が湧いた。ちなみにコラムでは板橋区を舞台とした作品があまり取り上げられていない。やはり作品数が相対的に少ないのかも知れない。私が書くか。