杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

金融道

中居正広主演のテレビドラマ「ナニワ金融道」を全て観た。これは1996年に放送されたもので、主題歌はウルフルズの「借金大王」である。この歌、いい。

原作からドラマにするにあたり、けっこうアレンジが加えられたのはこのブログで前にも書いた。私は原作の血も涙もない、ざらざらした「街金」の世界が好きだが、それよりはウエットに描かれているドラマの方も面白かった。

最後は、主人公の灰原が自分が目指す「金融道」の実践として、マルチ商法の女に融資したいと社長に申し出て、自ら連帯保証人になってチャレンジする内容になっている。それだけでなく、パチンコ依存症の女(高岡早紀)や恋愛商法をする女(池脇千鶴)との恋愛なども付加され、一つの長篇になっている。パチンコ女や恋愛商法の女は大筋には直接関係しないものの、最後は(灰原の勤め先の)帝国金融と大阪府警との駆け引きにまで発展し、二人との灰原たちの関わり方が警察のカードの一つにされてしまう。

マルチ商法に融資して一緒に儲けよう、つまり、客をカタにはめてお金を搾り取るのではなく客と一緒に成長しよう、というのが灰原の「金融道」のようだ。これに対し、緒方拳扮する社長は、客を育てようと思うな、といったことを言う。

金融業者が、融資した顧客と一緒に成長しようとすることは、あり得ないことではない。しかし帝国金融は高利貸しだし、貸す相手はマルチ商法なのだから、灰原の思想は無茶というしかない。社長の方が正しい。つまり灰原は甘いわけだが、シナリオも当然その甘さが仇になるように描かれている。

むろん銀行が融資先にいろいろアドバイスして一緒に成長しようとするのだって、それが自分の利益になるからやるのである。成功する見込みのない会社の経営者が頭を下げてきたって貸したりはしない。慈善事業ではないのだから。