杉本純のブログ

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俳優になりたかった

ある人がブログで、自分が一瞬だが俳優になりたいと思っていたことを書いていた。それを読み、そういえば私も短いが俳優を目指していた頃があったなぁ、と思った。とはいえ「一瞬」ではなく、いちおうオーディションを受け、合格して舞台にも立ったのである。

学生時代、地元で(たしか自治体による)演劇プロジェクトが立ち上がり、舞台公演をするということでアマチュア俳優を募集していた。その頃すでに私は日本映画学校への入学を決心し、脚本家兼映画監督になるぞと燃えていたが、俳優をやってみたい気持ちもあった。現に、一時期は映画学校俳優科(現在は廃止されているらしい)にも受験しようと考えていたほどだったのである。

どうして俳優になりたいと思ったのかというと、もう正確には思い出せない。若い人によくある、自己陶酔を含んだ、とめどない表現欲求からくる願望だったのではないかと思う。

マチュア俳優を募集していた頃はもう俳優になる気持ちはなかったが、何事も経験と思って応募したように記憶している。オーディションは即興芝居をするものだったが、自分では上手く演じられたかどうかぜんぜん分からなかったものの、合格した。定員は十人くらいだったはずだが、後で聞いたら、男性の応募者は定員より一名多かっただけとのことで、間違いなく、実力で合格したのではない。

スタッフはプロの人たちが参加していたが俳優は全員アマチュアで、舞台のクオリティはいま思うと、情けないほど低いものだっただろう。自宅には舞台を記録したビデオ(VHS!)があるが、いま見たいとは思わない。だが、舞台に立って人前で演じたのはいい経験になった気がする。家族が観にきてくれた。幕が降りた後、帰っていく観客を俳優たちがホワイエ?で見送った時、祖母ちゃんが泣いていた。