杉本純のブログ

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「舞台に立つ」

本多信一『内向型人間の仕事にはコツがある』(大和出版、1997年)を読んでいると、著者の本多さんは恐らくHSS型HSPだろうと思えてくる。しかし1997年当時、HSPは少なくとも日本では今ほど一般的ではなかったはずである。もちろん、そういう言葉がなくてもHSPに該当する人が存在していたのは考えるまでもない。本書を通して、当人たちがどのように考え、たくましく生きていたかが窺える気がする。

さて本書の中に、独立して自営業を行うことを勧める章がある。その中に「対人恐怖症でも情念の役者になれる」という節があり、内向型でも俳優やダンサーのような表現者になれる、と述べられ、むしろ「舞台に立つ」経験を積み重ねることで、逆にそれが自分を表現する特別な時間になる、と語られている。

分野はなんであれ「舞台に立つ」ことが、内向型男女の過剰な自意識をけずる効用もあるということだ。むろん、初めて舞台に立てば、内向者の心は委縮し、気を失いかねないが、何度も何度もやってみて「百回」を越える頃には、こうした無我の気分も味わえる。

「舞台に立つ」ことが、自意識過剰な自分を変革することにつながる、ということかと思う。「舞台に立つ」とは、行動を起こし、社会や他人と関わることだと思う。自意識過剰で行動できない人は、まずは思い切って一つ行動を起こしてみることが大切なのだろう。