杉本純のブログ

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取材力

NHKファミリーヒストリー」10月25日の放送は俳優・堤真一だった。

私は最近、青木雄二原作のテレビドラマ「ナニワ金融道」をDVDで観て、堤真一が肉欲棒太郎を好演していたのが印象に残っている。他に大河ドラマにも出ていたし、朝ドラにも出ていたし、他にも民放のトレンディドラマやら映画やら、堤真一はよく見ている気がする。

ファミリーヒストリー」の中身は感動的だったが、驚くべきはやはりNHKの取材力である。戦後のみならず戦前の様々な記録…学籍簿やら企業の人事記録やらをずんずん調べている(完璧な取材だったのかどうかはわからない)。フリーの無名のノンフィクション作家ならアクセスしようとしても難しそうな資料にアクセスできることには羨望を覚えた。関係者のコメントまで取れていたのはNHKのネームバリューがあればこそじゃないか…と思ったりしたが、それは必ずしもそうとは言い切れず、私はかつて住んでいた町にあった弘法大師ゆかりの松について、地元の老人に話を聞きに行き、快く話をしてもらったことがある。他に、ドキュメンタリー作品を作る過程でも、たくさんの人に無償で話を聞かせてもらった。

だが、いくら取材対象者が快く話をしてくれるとしても、そこに辿り着けなくては意味がない。大事なのは、その対象者が、自分が調べたいことについて有力な情報を持っているのを察知することであり、そのためには膨大な量の文献を漁り、レファレンス類を使い倒し、情報の在り処を探り当てなくてはならない。それが「取材」というものであり、容易な仕事ではないはずで、NHKの取材力はすごいと思う。

以前あるライターが、数十分のインタビューの中で有益な情報を引き出す力のことを取材力と言っていた。言いたいことは分かるが、それ以前に、本来は取材対象者のことやその周辺のことをよく知る必要があるはずだと私は思う。インタビューでは傾聴力や論理で詰めていく思考力などの方が重要で、それは「取材力」とはちょっと違う気がするのである。