杉本純のブログ

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「厄介な奴ら」

佐伯一麦『とりどりの円を描く』(日本経済新聞出版社、2014年)の「小川の文学」に、佐伯が若手作家の頃に参加していた勉強会「奴会」のエピソードがちょっと出ている。

「小川の文学」は、小川国夫と中沢けいと佐伯が志賀直哉の文学についての鼎談をしたことから書き出されていて、中沢とはほぼ十年ぶりの再会になったことが書かれている。

鼎談の後、島田雅彦小林恭二、盛岡出身の詩人である城戸朱理、劇作家の川村毅、評論家の富岡幸一郎らと会議室を借りて勉強会をしていた頃を懐かしく話し合った。
 厄介な奴らという意味を込めた「奴会」の勉強会の後には、頭をほぐそうと決まって酒になった。酒場で居合わせた年長の作家・批評家たちに当方が議論を吹っ掛けるのを、ハラハラしている姉といった顔付きで中沢さんがたしなめることがあったり、すっかり酔った彼女を何とかタクシーに送り込まなければと、金曜日の夜で空車が見つからない新宿の路上の真ん中に飛び出して行っては車を拾ったりしたこともあった。

「奴会」についてはこのブログで過去に数度触れたが、読みが「やつかい」なのか「やっかい」なのか分からなかったが「やっかい」で間違いなさそうだ。