杉本純のブログ

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佐伯一麦と坪内祐三

ユリイカ」2020年5月臨時増刊号は「総特集●坪内祐三」で、ここに佐伯一麦が寄稿しているので図書館で予約していたが、このほどようやく読むことができた。

寄稿は「回想・坪内祐三」というタイトルで、坪内の思い出を語ったものだ。佐伯は「それほど深い付き合いがあったわけではない」と書いているが、坪内の訃報を聞いてからはしばらく鬱鬱とした日々を過ごしたらしい。

佐伯は坪内と対談を二度、鼎談を一度行い、文庫解説を書いてもらったことが一度ある。文庫とは『鉄塔家族』(朝日文庫、2007年)で、坪内は解説でこの小説を「現代小説の傑作」と言っている。

「回想・坪内祐三」で面白いのは、佐伯が仙台から上京後、高田馬場フリーライター事務所に見習いとなった時のことが書いてあることだ。

そのすぐ後に同僚になった人が早稲田の文学部の二部に籍を置いていて、佐伯はその人の案内で早稲田のキャンパスに出入りしたことがあったという。佐伯の一歳年上の坪内は一浪して早稲田に入学。佐伯は同僚から、坪内が参加していた「マイルストーン」のことを耳にしたそうな。また、佐伯は高田馬場野口冨士男とすれ違ったことがあるが、坪内も早稲田通りで野口を見かけたことがあった。