杉本純のブログ

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ポオの描写力

エドガー・アラン・ポオの「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」(大西尹明訳『ポオ小説全集2』(創元推理文庫、1974年)所収)を読んでいる。

これはポオ唯一の長篇小説で、私は学生の頃にポール・ツヴァイク『冒険の文学』(中村保男訳、文化放送、1976年)を読んでその存在を知り、大岡昇平『現代小説作法』(文藝春秋新社、1962年)でデフォーの『ロビンソン・クルーソー』と書き出しの巧さを比較されていたのを読んで、ずっと読みたいと思っていた。なお大岡はポオよりもデフォーの方が格段に巧いと述べていて、その理由には納得させられた。

Wikipediaでは本作は地球空洞説が導入されているらしい節が読み取れるが、まだそこまで読んでいない。だが、冒頭からとにかく描写力の高さに唸らせられる。船の内部や、その中に施されている小さな仕掛けの説明などまで、描写を通してリアルに想像できるのだ。

事物や光景を稠密に描出していく行文は、ポオの感性が高精度スキャンのように異常なほどに鋭敏だったのを想像させる。ポオってどんな人だったのか。ポオの伝記は持っているが未読なので、小説とともにこちらも読みたい。