杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

バルザックと「ノブレス・オブリージュ」

ある時「ノブレス・オブリージュ」について調べることがあり、Wikipediaを読んだら驚くべき記述があった。

この言葉は「高貴さは(義務を)強制する」という意味らしく、簡単に言えば「貴族の義務」ということらしい。私はこの言葉を仕事を通して聞いたことがあり、知ってはいたのだが、意味はその後忘れてしまっていた。

Wikiによると、「ノブレス・オブリージュ」は、ピエール=マルク=ガストン・ド・レヴィという人が1808年に記したのが発端であるらしく、なんとバルザックが『谷間のゆり』で引用したことで広く知れ渡ったのだそうだ。知らなんだ。

いったいどこにその記述があるのだろうと思い、さっそく宮崎嶺雄訳の『谷間のゆり』(岩波文庫、1994年)を開いて、眼を皿のようにして探しまくるという暴挙に出た。ある人がnoteで『谷間のゆり』の「ノブレス・オブリージュ」について書かれている箇所を引用していたので、その箇所を探しまくったのだ。すると、noteの人が引用した文(誰の訳かは分からない)と同じような箇所を見つけた。

わたくしに言わせれば、公爵とか上院議員とかいう人たちは、貧民や職人が公爵や上院議員のために尽くさなければならない以上に、ずっと多く職人や貧民のために尽くす義務があるのです。互いに結ばれた恩義の絆は、何ごとによらず利害の範囲が広がるにつれて心労の重さも増すという、取引の場合にも政治の場合にも真実な原則によって、社会がその人に提供する利害の割合に応じてふえて来ます。

この箇所について小説には、ガストン・ド・レヴィがどうのこうの、とは書かれていない。が、ともかくこの箇所がその引用だとして知れ渡ったということか。よく分からない。岩波文庫は本文の後に詳細な注釈が付いているが、上記箇所については重要であるはずにも関わらず注釈がついていない。