杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

小説や映画を勧めること

この本を読んでくれ、とかこの映画を観てくれ、と人に勧めても多くの人はやらない、とある人が書いていた。これは私も両面で経験がある。つまり、勧めた相手が読んだり観たりしてくれなかったケースと、私自身も勧められて読まなかったり観なかったりしたことがある。

以前、恩師から勧められた『赤目四十八瀧心中未遂』は、勧められてから読むまでかなり時間が空いた。『されど われらが日々――』もそうだった。別の人がオススメだと言って貸してくれた『ナラタージュ』に至っては、読まないまま返してしまった。『経済ってそういうことだったのか会議』や『二十歳のころ』もそうで、ただし『経済って…』はその後自分で買って読んだ。

映画は、勧められて観なかったことはほとんどない。二時間もあれば終わるからだ。もっとも、映画は今はサブスクで観る人が多いだろうし、私の学生時代でもレンタルショップがたくさんあったので、ソフトを所有していること自体が少なく、したがって勧めてくれた相手から借りることも少なかったのだが、勧められた作品を観ようと思ってもショップになかった、などということがあった。『全身小説家』はそういう事情でけっきょく観ていないし、勧められたわけではないが『祭りの準備』もショップになくて観ていない(サブスクは今もやっていない)。

私はあまり人に本や映画を勧めない。というのは、どうやら私からのマウンティングと受け取られることが多いようで、まず読んでくれないからだ。また、私が渋い路線ばかり行き過ぎるということもあるのだろう。『若きウェルテルの悩み』は貸したが読んで貰えなかった。竹山道雄訳の岩波文庫だが、相手には古すぎたのだと思う。『アレクサンドル・ネフスキー』は、私がビデオを持っているという情報を入手した相手が観たいと言ってきたので貸して、当たり前だが観てもらえた。

ジャズが好きだという人に、ジャズの歴史を伝えるテレビのドキュメンタリーを録画したビデオを貸したが、そいつは観なかった。返してもくれない。ビデオだから、間違いなくもう捨てられただろう。もっともそいつは当時二十歳を過ぎていたが、一か月前くらいに初めてジャズバーに行って好きになったとかいう大したことない奴だった。