評判だったけど観ていなかった映画『カメラを止めるな!』(2017年)をやっと観た。
BSの「アナザーストーリーズ」でこの映画の製作秘話を放映していて、せっかくなので本編を観ようじゃないかということで観た。
面白かった。「アナザーストーリーズ」で上田監督は、面白い映画を作りたい、などと話していたが、その通りとにかく面白い。もう一回観たいかと言われるとそれほどではないのだが、ああそういうことだったの?と思わされる場面がいくつもあり、笑えるところもあって楽しかった。
まず劇中劇があって、これがやたらチープにできていて不自然にも感じられるのだが、後半でその種明かしが展開される。そこでは、予想外のトラブルが連発するものの映画チームのメンバーが力を合わせて乗り切っていく様子がテンポよく描かれる。またその過程に、家族の絆とかものづくりの姿勢についての監督の哲学めいたものが織り込まれている。
「アナザーストーリーズ」の方を私は先に見たのだが、劇中劇の30分以上にわたるワンカット、よく撮ったなぁと思った。カメラのレンズに血糊が付くところがあるが、カメラマンは予定外だがすばらしい展開になったと思ったらしく、実際に映画全体において効果を上げていたと思う。
とにかくテンポがいい。劇中劇とその種明かしもそんなに複雑でなく分かりやすい。緯糸、つまり家族の絆やものづくりの姿勢もごく一般的に受け入れられやすいものであり、後味がすっきりしている。言うなれば類型的とも言える作品で、だからこそべつにもう一回観なくていいや、という気もする。
また、後半部分を観ていて、私は自分の学生時代の映画づくりを思い出してしまった。この映画のように、作品を完成させる方へ皆の力が結集されていくとすばらしいと思うが、私が経験したのは、ガキが集まってめいめい自分勝手なことを言い合ってチームが崩壊寸前まで行ってしまったという、情けない映画づくりだった。。そういう、『カメラを止めるな!』とは逆方向へ展開していく話を書いてみるのはある意味で面白いかも知れない。