杉本純のブログ

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佐伯一麦と映画3

映画『第三の男』が製作されたのは1949年である。この作品を佐伯一麦は少なくとも高校時代までに観ていて、それがきっかけで高校の図書館にあったグレアム・グリーンの全集を手に取ったそうだ。佐伯は1959年の生まれなので、映画公開後三十年以内に観たことになる。私がこの作品を観たのはたしか1999年前後だから、公開後半世紀ほどが経っていたわけだ。まぁ、そんなのはどうでもいい。

上記の佐伯のエピソードは、『からっぽを充たす』(日本経済新聞出版社、2009年)の「木の中の隠しもの」に書かれている。佐伯は、グリーンの長篇はほとんど中途で挫折したが、短篇の数々に惹き付けられた、と書いている。

佐伯は随筆や対談の中で、ときおり映画の思い出を語っている。それらはいずれも断片的で、ちゃんとまとめられたものはないと思うが、人生を通してかなり身近な存在だったことは間違いないだろう。

ちなみに、佐伯の小説「一輪」はVシネマで作品化されたし、『ア・ルース・ボーイ』は映画化やテレビドラマ化もされた。「二十六夜待ち」も映画になっている。