杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

同人誌の世界とワナビ

Eテレの「ねほりんぱほりん」の、漫画同人誌の人たちが出た回を見た。毎度のことながら面白い内容だったが、今回は特に「同人誌」というテーマが私にとって縁あるものだったので、いろいろと思い出しながら、あれこれ考えた。

といっても私の場合は文学同人誌に過去に参加していたのだが、漫画同人誌の世界を見て、「二次創作」というのは文学同人誌の世界では(少なくとも私が関わった限り)存在しなかったなぁと思った。ある小説家が、小説のストーリーというのはだいたい型が決まっていて、肝心なのはキャラだ、面白い漫画は二次創作が創られるだろう、あれはキャラがちゃんとできているからできるんだ、といった意味のことを述べていた。私は学校の国語の授業で「ごんぎつね」の後日談を書いたことがある。『ワイマルのロッテ』や『続 明暗』は、一種の二次創作なのだろうか。とまれ、二次創作が創られる量は、漫画と小説では小説の方が圧倒的に少ないと思われる。私は小説創作におけるキャラクターの造形を軽んじているわけではないが、漫画のそれを引き合いに出してその重要性を述べるのにはためらいがある。

番組には案の定、漫画家ワナビが出ていた。東大を出て就職したものの漫画が好きで創作を続けていて、勤め人をしながら同人誌でこつこつやり続けていることが一つの特長として自己肯定感につながっている、といったくだりは、良かった。ワナビは勤め人生活を続けることでネタが手に入るし、収入も安定するので、そんなに悲観するもんじゃないと思う(それを理想と現実のギャップに苦悶するワナビに分からせるのは困難だが…)。むろん、プロ志向の人がワナビの状態に甘んじてしまってはいかんだろうとも思う。

また、あるプロ漫画家が、同人誌があることで漫画の世界の裾野が広くなり、その頂点が高くなる、つまり同人誌の存在が日本の漫画のクオリティ向上に寄与する、と言っていたが、そうかも知れないと思った。