杉本純のブログ

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板橋区立美術館「だれも知らないレオ・レオーニ展」を見た。

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レオ・レオーニの彫刻作品「プロジェクト・幻想の庭」(1978年)(手前)

板橋区立美術館で10月24日から開催している「だれも知らないレオ・レオーニ展」を見た。

私はなにしろ『スイミー』や『フレデリック』すらまともに読んだことがないので、レオーニの展覧会を深く味わう資格などない者だが、それでも楽しかった。

板橋区立美術館でレオーニの展覧会が初めて行われたのは1996年で、レオーニは来日を予定していたが体調不良で来られなかったとのこと。レオーニは1999年に亡くなったが、以降も遺族と区立美術館の交流は続いていたらしい。今回は、絵本原画や油彩画、政治風刺イラスト、スケッチなど、これまで「だれも知らない」レオーニの世界を紹介する展覧会である。

レオーニは1910年にアムステルダムで生まれた。父はダイヤモンドの研磨工をした後に会計士になった人で、母はオペラ歌手である。欧米の各地を転々とし、グラフィックデザインや広告、雑誌「フォーチュン」のアートディレクションなどの仕事を経験した。最初の絵本『あおくんときいろちゃん』を出したのは1959年で、それから徐々に広告の仕事から退いていったらしく、それから油彩画や彫刻や版画の制作に没頭していったというから、五十歳を目前にしてようやく藝術の世界に入っていった、という人生ではないだろうか。

展覧会はそれぞれ興趣に富むもので、デザインや広告の作品には感銘を受けた。というのは、やはり藝術だけをやって生きていくのはかなり難しいことで、レオーニも最初からそういう道には入れず、頼まれ仕事をやっていたのだなと、これは私の主観に過ぎないのだがそう思い、勝手に共感したのである。もっともレオーニ自身は、頼まれ仕事とはいえそれらの仕事を楽しんでやっていたことと思う。

工作舎の『平行植物』(2011年)やレオーニと松岡正剛の対談『間(MA)の本』が展示してあり、『間(MA)の本』は個人蔵とあったので、誰か持っている人を探して出してもらったわけだが、よく探したなぁと思った。まぁ工作舎の本は絶版でもアマゾンなどで買うことができるが(かなり高いけれど)。

彫刻作品「プロジェクト・幻想の庭」(1978年)は、ダイナミックで面白かった。レオーニの孫娘であるアニー・レオーニが2019年7月に区立美術館に来館し、他の作品とともにこの彫刻も寄贈することが発表されたという。「プロジェクト・幻想の庭」は板橋区立美術館蔵になるということだ。すごい。