杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

埴谷雄高の家

佐伯一麦は高校時代、吉祥寺にあった埴谷雄高の家に同人誌「青空と塋窟」を届けたらしい。今回、大倉舜二『作家のインデックス』(集英社、1998年)を読み、埴谷雄高吉祥寺南町の家が載っていたので、ここかも知れないと思った。もちろん、吉祥寺内で引っ越したりしている可能性はあるので、本書に載っている家に間違いないとは言えない。埴谷の自宅や引っ越し歴について詳しいことはぜんぜん知らない。なお、本書の埴谷宅は1991年11月に撮影されたもので、佐伯が訪ねたのは1970年代の後半、1976か1977年頃だろう。本書の埴谷宅は、外壁や柱などもけっこうな年月を経ていると思われるので、恐らく佐伯はここを訪ねたのだと思う。

『作家のインデックス』を見ると、埴谷は1991年11月時点で妻を亡くし、家には一人で住んでいたことが分かる。また、埴谷がこの時すでに高齢だったこともあってか、どことなく、全体に質素な印象を受ける。書棚にはドストエーフスキーなどロシア文学や、宇宙に関する本が多くあり、まさに埴谷の書棚といったところか。

面白かったのは、表札には「埴谷雄高」の隣に「般若豊」と併記してあることだ。しかし考えてみれば、筆名と本名を並べて表札に記した方がとうぜん間違いがない。佐伯一麦の家は隣に佐伯亨と併記してあるのだろうか。