杉本純のブログ

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ライターと作家2

 フリーのライターと言えば、小説家も同じようなものだが、作品という名刺を持っている。その名刺すらも持たないのがフリーのライターだと、酷な言い方をすればできた。商売柄、そういう連中の取材を受けたりすることもある。
 フリーがいいのか悪いのか、私にはなんとも言えない。筆一本にすべてを賭けているという点で、同じ仕事をしている正社員の雑誌記者より親しみを感じることもあったが、覆面で書いているという屈折と自己卑下が鼻につくこともあった。

北方謙三「かけら」(『帰路』(講談社文庫、1991年)所収)からの引用である。わずか数行だが、ライターと作家の違いが明確に記されていると思った。フリーか勤め人かはあまり関係なく、屈折や卑下がある人が少なくないのでは?と、漠然とながら感じている。「ライター」として雑誌などに顔を出して広く活躍している人も多いが、顔と名前を出せば、または自著を出したりすればそれは立派な「作家」なので、ここで言うライターは署名原稿すらない人である。

ライターと作家は、毎日やっていることは同じようなものだろうが、実は天と地ほども違う立場にある。