杉本純のブログ

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諦めちゃいかん

NHK「逆転人生」の11月22日の放送は「殺人のえん罪を晴らせ 43年がかりの逆転劇」でした。

布川事件で殺人の容疑者として逮捕され無期懲役になった桜井昌司さんが、獄中から手紙を書き続け、桜井さんの無実を信じる弁護士などとともに裁判のやり直しを目指して取り組み、足掛け43年の奮闘の末についに無実を勝ち取るという、途方もない逆転劇です。

43年というと私の人生よりも長いので、無実を勝ち取るためにそれほどの長きにわたって戦い続けたこと自体が、まず想像が難しい。

桜井さんを逮捕した警察による虚偽の自白調書が無期懲役の根拠になったわけですが、これを覆す戦いのステップの一つひとつが年単位という遅さで刻まれるため、私ならとうに諦めていただろうと思うと同時に、事実を論理でつなぎ合わせることで遠い過去の出来事でもきちんと問い直すことができるのだな、と思いました。

ちなみに、冤罪で逮捕され長年にわたって獄中生活を送る話といえば、『ショーシャンクの空に』があります。これはスティーブン・キングの「刑務所のリタ・ヘイワース」が原作で、約20年という歳月をかけて脱獄に成功する話。どんなに深い絶望の中にあっても希望を捨てない、ということがテーマかと思います。一方、桜井さんの獄中生活は29年。長さは問題ではないかもしれませんが、無実を証明するまでに費やした歳月が43年という、『ショーシャンクの空に』の倍以上の時間だったことを考えると、事実は小説より奇なり、否、事実は映画を凌駕する、といった感じがします。

敗北だと思った人生でも、逆転の可能性は残されている。やっぱり諦めちゃいかんですね。