米澤穂信『氷菓』(角川文庫、2001年)を読み、もしかしたら著者はジム・ジャームッシュの『ダウン・バイ・ロー』を見て、最後の言葉遊びを思いついたんじゃないかなと思いました。
ネタバレになってしまうので詳しくは書きませんが、勘が良い、推理力がある人なら、氷菓、ダウン・バイ・ローと言葉遊び、という材料があれば、私がそれらを結び付けた理由が分かるでしょう。
ストーリーやトリックでなくとも、言葉遊びの要素が盛り込まれた小説というのは楽しいものです。『ロビンソン・クルーソー』はその冒頭に、自分の本名はロビンソン・クロイツナーエルだがイギリスによくある訛りによってクルーソーと呼ばれるようになり、自分もそう名乗るし署名するようにもなった、というユーモラスなエピソードが添えられています。また大江健三郎『キルプの軍団』の冒頭には、Quilpとアルファベットで印刷した様子がネズミに似ていると思う、という冗談がありますが、これが何とも言えない楽しい気分にさせる。
佐伯一麦が「佐伯麦男」という名前で新人賞に応募し、文壇に爆弾を仕掛けたつもりだった、というのは梶井基次郎「檸檬」に引っ掛けてのことで、こういうのも面白いですね。