杉本純のブログ

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ポオ「沈黙」

エドガー・アラン・ポオの「沈黙」(『ポオ小説全集2』(創元推理文庫、1974年)所収、永川玲二訳)を読みました。

わずか5ページのごくごく短い作品で、その内容は、悪霊が「ぼく」に、私の物語をきけ、と話し掛けてきて始まります。その物語は、リビアの僻地、ザイレ河の流れるあたり、が舞台ということですが、アフリカだからザイール川のことかなと思いましたがザイール川(コンゴ川)の流域にリビアは入っていないようで、よくわかりません。河の水は「病的なサフラン色」、その河床は巨大な青白い睡蓮で埋め尽くされていて、周囲の岩の頂上には「神の風貌」の男が立っている……

と、幻想的な情景なのですが、その後の展開はちょっと意味不明です。ネットにはブロガーが独自の解釈をした記事があったりしますが、私はちとお手上げでした。。

本作についてポオの伝記『告げ口心臓』(八木敏雄訳、東京創元社、1981年)を書いたジュリアン・シモンズは、その伝記の中で、ポオの複数の作品の中でも「ほとんどいかなる点でも現実と接触しない物語」に属する、と言っています。なおかつ「短い散文詩」とも述べていますが、『告げ口心臓』ではそれ以外に「沈黙」に関する記述が見当たらず(あるかも知れませんが未読。少なくとも索引にはその箇所があるページしか記されていません)、成立事情や作品に込めた意図もよくわかりません。