杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

ネットと印刷物

井上真琴『図書館に訊け!』(ちくま新書、2004年)は、調べ物と書き物をする人間にとっては必読の書なんじゃないかと思います。中高生にはもしかしたらレベルが高すぎるかもしれませんが、大学生だったら一通り目を通しておくべき本ではないでしょうか。

さて、その第1章「図書館の正体と図書館への招待」には、インターネットで得られる情報は裏を取る作業が抜け落ちていることが多いので、おおむね信頼できない、といったことが書かれている箇所があります。そこを読み、いろいろと考えました。

ネットの情報があまり信頼できないのであれば、では印刷物の情報は信頼できるのか。ネット情報が間違っている確率は、印刷された書籍や雑誌の情報が間違っている確率と変わらない、と聞いたことがあります。その通りでしょう。裏を取るとは、一次情報を確認するということかと思いますが、ネット情報でそれを行っているものはあるし、それをやらずに書かれている印刷物もあります。

ネット情報は印刷物と違って随時編集でき、書いて世界に発信するハードルが印刷物ほど高くないように思います。また、編集・執筆の教育を受けていない素人でも情報発信できてしまう、また気軽に始めやすい、といった側面もあるのではないか。そうした背景があることで、ネット全体で考えると信頼度が落ちてしまう、そんな風に私は思います。

私はオープンアクセスの論文から情報を得ることがあるし、ある映画監督は本の中で、古い映画がYouTubeでいつでも全篇見られるのはありがたい、と書いていました。これは『図書館に訊け!』にも書いてありますが、ネットが調べ物を行う上で便利な道具であるのは間違いないと思います。大事なのは、調べる本人が、接した情報の真偽を吟味し、しかるべき活用の仕方をすることでしょう。ネットであれ紙媒体であれ、それは変わらないと思います。