難しい注文
先日もこのブログに書いた渡瀬謙『負けない雑談力』(廣済堂新書、2016年)ですが、読んでいて面白かった箇所がありました。
第1章「雑談ってコツさえわかれば簡単なんです」の、雑談の目的がわかれば話しやすくなる、と書かれているくだり。
何でもいいからしゃべれと言われても困りますが、この方向で話せと言われれば、私のような口下手なタイプでも話しやすくなるはずです。雑談のコンセプトのようなものです。
私は以前、デザイン制作の仕事をしていましたが、そのときも「とりあえず何か作って」と言われるのが一番困りました。やはり、「落ち着いた感じで」とか「躍動感を出したい」などのコンセプトがないとできないものなのです。
渡瀬は広告や雑誌制作などでクリエイティブな仕事をしていたらしいので、「とりあえず何か」と言ってきたのは恐らくクライアントか、クライアントから注文を受けてきた営業でしょう。
ことさらに丁寧に対応しなくていい
私はライターをしていますが、そういう頼まれ方をされると困る、というのは深く共感します。クリエイターは、あくまで「何か」を作りたいと思っているクライアントの「作る」を代行する人なので、その「何か」について思いや素材を共有できなければ、作るのは難しい。また、そういう頼み方をする人に限って、作ったものに対し「いや、こういうものが欲しいんじゃないだよなぁ」などと言ってきます。クリエイターなら言わずとも自分の気持ちを理解しているとでも思っているのでしょう。
私の経験では、そういうクライアントは、こちらがノーヒント状態でも想像を働かせ、いろいろと手を尽くして対応しても、結局あれこれ不満や追加注文を出してくることが多い。要するにクリエイターに指示することが下手で、敬意さえも持っていないのでしょう。だからノーヒントで不満ばかり言うので、こちらは時間と労力を奪われるだけになることが多いのです。そういう人にはことさら丁寧に対応しなくていい、と思っています。