杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

優秀なデザイナー

まず解決不可能な重力問題

ビル・バーネット&デイヴ・エヴァンス『スタンフォード式 人生デザイン講座』(千葉敏生訳、早川文庫、2019年)を読んでいます。これは2017年に早川書房から出た同じ著者・訳者の『LIFE DESIGN スタンフォード式 最高の人生設計』の改題・文庫化したもので、私は以前そちらも読みましたが、今回文庫の方を手に取って改めて読んでいます。

本書の2017年版のことを以前にこのブログで取り上げていて、そこで私は「重力問題」について思ったところを書きました。

詩人が所得を高めるには詩のマーケットを変革しなくてはならないが、それは完全に不可能ではないながら、途方もない時間と労力を要する。というより、まあ完全に不可能といって差し支えないレベルの問題です。そういう問題を、本書では地球の重力のように解決が難しい問題、すなわち「重力問題」と呼んでいます。

今回、改めて読み、重力問題に向き合う方法について書かれた箇所に眼が留まりました。

 重力問題と向き合う唯一の道は、「受け入れること」しかない。そして、優秀なデザイナーはみな受け入れることからスタートする。これがデザイン思考の「受容」の段階だ。だからこそ、あなたは「現在地」からスタートしなければならない――あなたが夢見る場所でも、いたらいいと思う場所でも、いるべきだと思う場所でもなく、そう、あなたがたったいまいる場所から……。

まずは「受け入れる」しかない

ここで言う「優秀なデザイナー」とはファッションデザイナーとかエディトリアルデザイナーではなく、人生を設計するその人、すなわちライフデザイナーのことです。

ワナビは「いつか作家(他には、俳優とかミュージシャンとか)になりたい」と常日頃から思っています。ワナビにとって、「いつか~になりたい」はしばしば重力問題です。簡単には解決できない、あまりにハードルの高い問題です。

この問題に対処するには、本書に書かれているように「受け入れる」しかないでしょう。作家になりたいとただ思っているだけで行動しない人は、だからこの重力問題を「受け入れていない」と言えます。

作家になりたい、でもまだなれない、いま自分はどれだけ作家から離れていて、どうすれば作家に近づけるか。それを具体的に検討し、計画を立てて行動する。つまり、自分の現在地を知り、そこから目的地を見据え、距離を測り、到達するために歩み始める、ということ。

それが、ワナビが「ワナビを抜け出したい」という重力問題に対処する唯一の方法だと思います。