『人生の親戚』を読んで
5月8日、韓国の詩人・金芝河(キム・ジハ)が死にました。81歳。
報道では金は韓国民主化の象徴だとありましたが、私は詳しいことは知らず、恥ずかしい限りです。ただ、大江健三郎が1975年に他の文化人などと共に数寄屋橋公園でハンガー・ストライキを行った理由が、たしか金が死刑判決を下されたことへの抗議だったと記憶しています。
大江のこのハンガー・ストライキ体験は長篇『人生の親戚』(新潮文庫、1994年)に活かされ、冒頭にそのシーンが出てきます。私はその箇所を読んだ時に大江のハンガー・ストライキについて知りたいと思い、当時の新聞を読んだものでした。
私は当時まだ生まれておらず、韓国の民主化云々はぜんぜん知らなかったし、金のことも大江のハンガー・ストライキのこともまったく知りませんでした。それが、少しではありますが知るきっかけになったのが『人生の親戚』です。今も詳しくはないのですけれど…。とまれ小説は、過去の出来事に関心を持つきっかけになることがあります。