スティーブン・キングが『書くことについて』(小学館文庫、2013年)で、
仕事場に入るときには、その日の目標を決めておいたほうがいい。肉体の鍛練と同じで、はじめのうちは目標を低く設定しておかないと、達成できなかったときに悔いが残る。
と述べている。大江健三郎が『私という小説家の作り方』(新潮文庫、2001年)で述べた
書きすすめてゆくその日の労働がカヴァーしうる部分より遠くを見てはならない。むしろ前方のことは放っておいて、その日の労働にのみ自分を集中させうるかどうかが、職業上の秘訣である。
と似ていると思う。
いきなり大きな目標を立てるとハードルが高過ぎて達成できず、イライラしたり自己嫌悪に陥ったりするもの。私も過去に、そういうことが何度かあった。大きな目標に挫折すると、その口惜しさを乗り越えるためにさらに大きな目標に挑戦し、やはり挫折してさらに強い自己嫌悪になるという悪循環に陥っていた。それだけでなく、そのせいで小説を書くのが億劫にすらなったものだ。
その日の目標をあまり高くせず設定しておいて、それをちゃんとやり、次につなげたいものだ。