面白い一冊
篠山紀信『作家の仕事場』(新潮社、1986年)を読みました。よくある作家と書斎の写真集で、「小説新潮」1979年新年号から1984年12月号まで連載した「日本の作家」シリーズを再構成したものです。背表紙を見ると、定価5,000円とあります。高価。
登場する作家は井上靖、松本清張、有吉佐和子、池波正太郎、大岡昇平、石川達三、円地文子、吉行淳之介、新田次郎、曽野綾子、井上ひさし、井伏鱒二、丹羽文雄、司馬遼太郎、田中小実昌、佐多稲子、立原正秋、遠藤周作、野上彌生子、星新一、永井龍男、瀬戸内晴美、野坂昭如、藤原審爾、吉村昭、北杜夫、田辺聖子、筒井康隆、安岡章太郎、山口瞳、向田邦子、城山三郎、佐野洋、阿川弘之、藤沢周平、水上勉、佐藤愛子、渡辺淳一、開高健、川上宗薫、色川武大、結城昌治、南條範夫、丸谷才一、中上健次、陳舜臣、山田風太郎、阿刀田高、三浦哲郎、黒岩重吾、大江健三郎、夏樹静子、笹沢左保、半村良、宮本輝、安部公房、高橋三千綱、赤川次郎、山崎豊子、五木寛之。
それぞれの作家についての短文が載せられていますが、それを書いているのが別の著名な作家などで、その中には上記作家もいます。その短文が、恐らくいずれも軽く書き流したものですが、紹介する作家への微妙な距離感を感じさせ、何とも言えず個性的で味わいがあります。
深田祐介による山崎豊子を書いた文章は、山崎を担当することになった編集者は事前に人間ドックに行くとか、海外旅行の前には水盃をあげるとか述べられていて、山崎の凄さが伝わってきます。また吉増剛造による中上健次についての文章には、吉増が中上と相撲をとったことが書かれていて、その場には当時「文藝」編集長だった寺田博がいたようで、また出てきた寺田博、と思いました。
などなど、楽しい話がたくさん出ていて面白い一冊です。