杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

師匠と弟子

いわば恋愛関係

2年以上前、このブログで師弟関係について書きましたが、最近、身近なところで「弟子」という語を聞き、考えさせられる機会があったので、また書くことにしました。

落語家とか相撲部屋とか、あるいはライターやデザイナーといったクリエイターの世界でも、師弟関係というものがあります。徒弟制というのは本来、若者が、この人は、と思った人の元を訪ね、弟子にしてくれと懇願して認められた場合、弟子になることができて、師の身の回りの世話をしながらその技や藝を盗む、ないし指導される、といったものだと思います。相撲部屋とかだとスカウトがあるようですが、基本的には若者の方から願い出て弟子にしてもらう、という関係ではないか。だから弟子は進んで師の身の回りの世話をするのであり、お前弟子になれと言われた相手の世話なぞしたいはずがない。

さて多くの場合、師弟関係は美化されて伝えられているように思います。ドラマとか映画とかで見かける師弟関係は、師匠による愛情の裏返しとしての苛烈な指導があり、弟子はそれに耐えて一人前になり、別れの場面などが涙で演出されたりする。

実際の師弟関係の中にはそういう美しいものもあるでしょうけれど、そうでないものもあるはずで、いや逆に私はそうでない関係の方がはるかに多い気がしています。立川談四楼は落語家の師弟は精神的なホモセクシュアルだと言ったそうですが、つまり師弟関係は恋愛関係のようなものだということではないか。弟子は師匠に憧憬を抱くが、幻滅させられることだってもちろんあり、憧れが恨みに変わることだってあるはずです。

私自身、かつて師匠と慕った人はいくたりかいますが、その全てに幻滅して今に至っています。このテーマは必ずや小説にしたいと思っています。