2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧
大沢在昌『小説講座 売れる作家の全技術』(角川文庫、2019年)を読んでいる。これは、2012年に角川書店から出た単行本に加筆修正したもの。 その中の「作家になるために大切な四つのポイント」は、1正確な言葉を使う、2自分の原稿を読み返す、3毎日書く…
これまでの人生を思い返してみると、何かと人の優れた部分に羨望を抱き、あるいは自信に溢れた人に心酔し、恋愛でも友情でも片思いをしたりと、他人に振り回されることが多かった。 これらはすべて(まだ他にもあるだろうが)、他人に心を奪われてしまうこと…
2月27日、第35回太宰治賞の一次選考通過作品が発表された。私が知る人は、その賞に応募していたようで、一次選考を通過していなかったことをSNSに投稿していた。一次通過者の中には自分よりずっと年上の人もいたらしく、自分はまだまだ頑張らなくては、と述…
ホラーティウス『詩論』(松本仁助・岡道男訳、岩波文庫、1997年)の三八-四五には、次のような言葉がある。 詩を書くなら、自分の力に合った題材を選ぶこと。そして自分の肩に何が担えるか、何が担えないか、時間をかけてよく考えること。自分の力であつか…
北方謙三先生の『第二誕生日』(集英社文庫、1985年)は、先生のエッセイ集。第一章「軌跡」の最初の見出し「決断」の中に、北方先生が痛切な自覚と共にワナビを脱却していく経緯がごく簡潔に述べられており、今でもときどき読み返すことがある。 北方先生は…
樫原辰郎『『痴人の愛』を歩く』(白水社、2016年)に、谷崎は文学青年に興味がなかった、という興味深い記述がある。谷崎と今東光の関係を紹介するくだり。 この時代、人気作家のもとには、作家志望の若者たちが弟子入りを志願したり、自作を読んでもらうた…
3月11日から27日まで、板橋区の赤塚支所の1階で「平成30年度 いたばし景観写真展「板橋崖線」が開催されている。 武蔵野台地の崖線である「板橋崖線」に関する景観の取り組みや、歴史や文化を写真を通して紹介するもの。崖線には豊かな樹林地や湧水があり、…
小澤卓也、田中聡、水野博子編著『教養のための現代史入門』(ミネルヴァ書房、2015年)を読んでいる。 歴史無教養を自認し、なおかつ文系の教養というのは歴史と地理が基礎になるだろうと思っているので、こういう入門書からきちんと読もうと考えてのこと。…
佐伯一麦の「木を接ぐ」にはウェルギリウスの詩のエピグラフがある。 ダフニスよ、梨の木を接げ。汝の孫たち、その実を食うべし。 ――ヴィルギリウス この詩が全体としてどんな詩なのか、しばらく分からなかった。 ウェルギリウス(ヴィルギリウス)は遅筆で…
「デジタル土方」という言葉があるのを最近知った。かねがね、システムエンジニアとかカスタマエンジニアの就労状況は正直に言ってあまり良いものではないと思っていたが、そういうのを端的に表す俗称がやはりあった。当人が自虐的に用いる例もあるようだ。 …
最近気がついたのは、人の性格や思考、はたまた頭脳の程度に至るまでが、その人の「笑い」によって分かってしまうという、ある意味で当然のことだ。 笑いにはそもそも暴力性があるらしいので、どういう場面でどう笑い=暴力を用いるかに人間性が現れるのは当…
都営三田線「西台」駅に隣接する志村車庫の上には約3万5千平方メートルの人工地盤がある。都営西台アパートはその上に建てられており、地面から隔絶されていることから、宮崎駿の映画になぞらえ「ラピュタ」とも呼ばれている。 団地や建築に興味のある人の間…
何があっても自己否定の泥沼にはまってはいけないと思う。他人の評価に耳を傾け、自己を客観的に見る努力は必要だが、いかなる評価を下されても最終的なところでは自分を肯定してやらなくてはならない。自分を否定し続けるとそういう思考回路になってしまい…
先だって、初めて大場つぐみ原作、小畑健作画の漫画『DEATH NOTE』(集英社)を全巻読んだ。この漫画は2003年12月から2006年5月まで週刊少年ジャンプに連載されたそうだが、この時期は私は映画学校の2年生から社会人2年目の頃で、心身ともに、また経済的にも…
現状を変えようとして改革を行うに際し、誰誰が困ってしまうから良くないとブレーキをかける人がいる。その人は公平性が大切だ、などと言うのだが、公平性などを意識していたら現状の改革などできないだろうと思う。 例えば再開発。これを行うにはその街の従…
樫原辰郎の『『痴人の愛』を歩く』(白水社、2016年)が面白い。 谷崎潤一郎の代表作の一つ『痴人の愛』を巡る推察と調査。冒頭は、作品の舞台を歩く中で巧みにその世界に引き込んでいく、上等な文学紀行の趣がある。 その中に興味深い記述があった。『痴人…
連載26回目。最終回である。 この小説は同人誌に発表したもので、「名前のない」とは「タイトルがない」という意味。主人公の「名前」は、最後に苗字だけ出てくる。 本作は、「読書人」の同人雑誌評に取り上げられたことがある。わりに好意的な評価を受け、…
北野唯我『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社、2019年)という本を図書館で見て面白そうだと「衝動借り」した。 この本は「凡人が、天才を殺すことがある理由。」というブログを書籍化したもの。ブログは公開後すぐに30万PVを超えたというからすごい。 …
こないだ見たNHK「クローズアップ現代」はパニック障害を取材したものだった。これは、とつぜん動悸がしたり呼吸ができなくなったりするもので、ここ数年日本では発症する人が何倍にも増えているらしく、恐ろしい。 私はそこまでキツい状態にはならなかった…
朝日新聞の日曜朝刊で連載されている「仕事力」は、2月3日から四週にわたり歴史の磯田道史先生だった。この人の言うことは、専門的なことはよく分からないが物の考え方や仕事観などは面白くてためになる。「仕事力」の連載でも、面白い言葉があった。「雪だ…
「杉本純のブログ」は開設して一年経過した。3月11日に始めたのは単なる偶然で、別に地震とか原発とかの記事は一切書いていない。 このブログは、ライフワークである調べ物の成果を断片的でもいいので発表したい、という欲求から開設したもので、今後の私の…
神保町の古書店で、「文学の鬼を志望す――八木義德」(北海道立文学館、2009年)を入手した。北海道立文学館の企画展の図録で、紅野敏郎と根本昌夫が監修を担当しており、佐伯一麦の寄稿「昭和という時代の象徴を描く」が載せられている。 その中では、佐伯が…
#MeToo運動の発端と波紋を取り上げたNHKのドキュメンタリー「アナザーストーリーズ」を見た(2019年2月5日放送)。 この番組を見ると、日本はアメリカほど#MeToo運動が盛んではないように感じるが、さすがに私も知っている。映画プロデューサーのみならず映…
連載25回目。 →「名前のない手記」(25) →「名前のない手記」(24) →「名前のない手記」(23) →「名前のない手記」(22) →「名前のない手記」(21) →「名前のない手記」(20) →「名前のない手記」(19) →「名前のない手記」(18) →「名前のない手記…
「夜郎自大」という語を最近知った。自分の力量を知らずに仲間内で尊大に構えることだ。私自身、そういうお馬鹿をやらかしたこと、一度や二度じゃなかったなぁと忸怩たる思いも持った。 また、この語を知って即座に思い出したのは、主に二十代の頃に接した人…
板橋区西台図書館に行き、「『西台3丁目』誕生の頃 昭和四十三年」というささやかな写真展を見た。板橋区公文書館が所蔵写真を貸し出しての展示となり、普段は決して足を運ばない図書館だったが面白そうだったので見てきた(開催時期は2月1日から27日までで…
二十代の頃、私は自我がかなり不安定になり、その結果、自信に満ちている人、人生をたくましく生きている人に強く惹かれ、心酔し、自分の心の拠り所にしていたことがあった。しかし、やがてその相手が自分の願望を叶えてくれるわけでもなく、私の内部の欠け…
「兵は拙速を尊ぶ」という言葉があるらしく、「少々不味くても速いに越したことはない。だから準備を完璧にしなくてもいいのでとにかく迅速に行動に移せ」という意味に捉えられることが多い。この言葉は「孫子」の中にあるそうで、「ビジネスマンは拙速を尊…
高島平は3月1日に地名誕生50年を迎えた。板橋区はかねてこのことをPRし、高島平の町内各地では一日から三日までイベントが催されている。 その中の一つ、高島平区民館ホールで行われている「高島平ヘリテージ50」に足を運び、高島平の成り立ちを物語るスポッ…
Eテレで2月6日に放送された「ねほりんぱほりん 勝負の厳しい世界、将棋の奨励会で夢破れた男たちの人生」を見たのだが、これこそワナビの世界ではないだろうかと思った。 私は将棋の世界は知らないが、奨励会とはプロ養成所のようなところらしい。そこでは段…